「任意整理中だけどクレジットカードが作れた」——そんな体験談を見て、自分にも可能性があるのではと調べている方が多いはずです。結論から申し上げます。任意整理の手続き中に、新規でクレジットカードを作ることは現実的にできません。そして「作れた」という話の大半は、新規発行ではない別の何かです。
ただし、カードがなくて本当に困る場面のほとんどは、クレジットカード以外の手段で解決できます。この記事では、なぜ作れないのかを法律と審査の仕組みから説明したうえで、今日から使える代替手段と、5年後にカードを持てる自分になるための順序を具体的に解説します。
- 任意整理中の新規カード発行は、信用情報の記録と割賦販売法上の調査義務により、現実的に不可能です。
- 「作れた」の正体は、家族カード・デビット・プリペイド・整理対象外の既存カード・登録期間が過ぎていたのいずれかであることがほとんど。
- 目安は和解した返済を完済してから約5年。返済期間を含めると着手から8〜10年程度かかります。
- ネット決済・サブスク・高速道路のETCは、デビットカード・プリペイド・ETCパーソナルカードで代替できます。
- 信用情報の登録期間や法令の内容は、CIC・JICC・全国銀行個人信用情報センター(KSC)・e-Gov法令検索などの公表資料を確認して記載しています。参照先は記事末尾の「出典」にまとめています。
- 執筆は、自身も多重債務からの立て直しを経験した LingoTimes 編集部が担当しています。実体験に基づく部分は「筆者の経験」と明示し、一般論と区別しています。
- 審査基準は各カード会社が非公開としているため、特定のカードについて「通る・通らない」を断定することはしません。
- 本記事は情報提供を目的としたもので、個別の法律相談・与信判断を行うものではありません。
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任意整理中にクレジットカードが作れない、2つの理由
理由1:信用情報に「異動」が登録される
任意整理を始めると、対象にした債権者との取引について、信用情報機関に返済が正常に行われなかった事実が登録されます。CICは自らが保有するクレジット情報の保有期間を「契約期間中および契約終了後5年以内」と公表しており、延滞・保証履行・破産といった異動の記録もここに含まれます。JICCも、2019年10月1日以降の契約について債務整理・破産申立を「契約継続中および契約終了後5年以内」としています。
カード会社は申込時に必ずこれらの機関へ照会します。記録がある間は、審査の入口で止まると考えてください。
理由2:割賦販売法がカード会社に調査を義務づけている
ここは見落とされがちな点です。クレジットカード(包括信用購入あっせん)を発行する会社には、割賦販売法によって「支払可能見込額」の調査が義務づけられています。年収から生活維持費と既存の債務額を差し引いて算出する仕組みで、その調査の際に指定信用情報機関の情報を使うことも法律上定められています。
つまり、カード会社が「事情を汲んで発行してあげる」という判断を取ることは、法律上できません。「審査が甘いカード会社を探す」という発想がここで成り立たなくなります。
「ブラックでも作れるカード」「審査なしのクレジットカード」をうたう案内には近づかないでください。法律上、審査なしでクレジットカードを発行することはできません。多くは会員登録料や情報料を取るための誘導か、個人情報を集めることが目的です。
「任意整理中でも作れた」という話の正体
掲示板やQ&Aサイトの体験談を丁寧に読むと、次のいずれかに整理できます。
1. 家族カードだった
配偶者や親が本会員のカードに、家族会員として追加されたケースです。家族カードの審査対象は本会員の信用情報なので、本人に異動情報があっても発行されることがあります。ただし利用代金の支払義務は本会員が負うため、家族との合意が前提です。
2. デビットカード・プリペイドカードだった
見た目はクレジットカードとほぼ同じで、国際ブランドも付きます。審査がないため「カードが作れた」と表現されがちですが、これは信用取引ではなく、口座残高やチャージ額からの即時払いです。
3. 整理の対象から外した既存カードだった
任意整理は対象の債権者を選べる手続きです。対象外にしたカードがしばらく使えることはあります。ただし後述のとおり、途中で止まる可能性が高い点に注意が必要です。
4. すでに登録期間が過ぎていた
「任意整理中」と書いていても、実際には完済から5年以上経過していたというケースです。時系列が曖昧なまま体験談だけが拡散していることは珍しくありません。
対象外にしたカードも、いずれ使えなくなる可能性が高い
「よく使うカードだけ任意整理の対象から外せば、そのまま使い続けられる」と考える方は多いのですが、ここには落とし穴があります。
カード会社は契約後も定期的に会員の信用情報を確認しています(いわゆる途上与信)。更新のタイミングや定期的な確認で他社の異動情報が把握されれば、利用停止・限度額の引き下げ・強制解約となることがあります。実際、任意整理の対象外にしたカードが数か月後に止まるのはよくある展開です。
筆者の経験でも、公共料金やサブスクの引き落としをそのカードに集めていたため、止まった月に複数の支払いが一斉に滞りました。止まる前提で、引き落とし先を口座振替へ移しておくのが実務上いちばん大事な準備です。
【重要】手続き中に無理に申し込むと、任意整理そのものが壊れる
「ダメ元で申し込んでみよう」は避けてください。理由は2つあります。
- 申込履歴が残る:CICでは申込情報が照会日から6か月間保有されます。短期間に複数申し込むと、その履歴自体が次の審査でマイナスに働きます。通らない時期に申し込むのは、純粋に不利益だけが残ります。
- 和解交渉が破綻し得る:任意整理は、弁護士・司法書士が代理人となって返済条件を交渉する手続きです。交渉中に新たな信用取引を試みれば、返済能力の前提が崩れ、まとまりかけた和解が白紙に戻ることがあります。代理人に無断で行えば信頼関係が損なわれ、辞任につながる例もあります。辞任されれば督促が再開し、状況は手続き前より悪化します。
カードが必要な事情があるなら、まず担当の弁護士・司法書士に相談してください。ほとんどの場合、次に紹介する代替手段で解決できます。
クレジットカードがなくても困らないための代替手段
「カードがないと生活できない」と感じる場面は、具体的には次の5つに絞られます。それぞれ手当てがあります。
1. ネット決済・サブスク → デビットカード
銀行口座から即時引き落とされるカードで、国際ブランドが付いたものは通販やサブスクの決済に使えます。原則として審査がなく、信用情報も照会されません(口座開設の可否は各行の判断によります)。使った分だけ引かれるので、任意整理中の家計管理にはむしろ向いています。
2. 少額のオンライン決済 → プリペイドカード
コンビニやアプリでチャージして使う前払い式のカードです。こちらも審査は不要で、使いすぎの歯止めにもなります。
3. 高速道路のETC → ETCパーソナルカード
意外と知られていませんが、クレジットカードを持てない人のためのETCカードが存在します。NEXCO東日本・中日本・西日本、首都高速道路、阪神高速道路、本州四国連絡高速道路の6社が共同で発行するETCパーソナルカード(通称パソカ)で、あらかじめデポジット(保証金)を預けることで利用でき、クレジットカードの審査はありません。支払いは口座振替です。車を使う仕事をしている方にとっては、これがあるかどうかで生活が変わります。
4. 公共料金・携帯料金 → 口座振替へ切り替え
カードが止まる前に、口座振替へ移しておいてください。手続きは各事業者のWebか郵送で完結します。カード停止による連鎖的な滞納は、任意整理中に最も避けたい事態です。
5. ホテル・レンタカーの保証 → デビット可否を事前確認
デポジットや与信枠の確保を求められる場面では、デビットカードが使えない場合があります。事前に電話で確認し、現金対応が可能かを聞いておくと確実です。
いつからカードを作れるのか、そしてその日のための準備
時期の目安
任意整理の場合、和解した返済(通常3〜5年)を完了し、完済から約5年で信用情報の記録が消えるのが目安です。着手から数えると8〜10年程度かかる計算になります。なお自己破産・個人再生では、官報情報が全国銀行個人信用情報センター(KSC)に7年登録されます(2022年11月4日に10年から短縮)。
期間中にやっておくと差がつくこと
- 和解した返済を一度も遅れずに終える:これが最大の信用回復です。
- デビットカードで決済実績と家計管理の習慣をつくる:カードが戻ったときに使いすぎない土台になります。
- 携帯電話の端末代を分割で支払う:これも割賦契約なので、期間経過後に滞りなく支払えば良好な履歴として残ります(ただし期間中は審査に通らないことが多いため、無理に申し込まないでください)。
- 期間経過後、まず自分の信用情報を開示する:CIC・JICC・KSCはいずれも本人開示に対応しています。記録が消えたことを確認してから申し込めば、無駄な申込履歴を残さずに済みます。
- 整理した会社と同じグループは避ける:信用情報の登録期間が過ぎても、社内の取引記録は残り続けます。
返済自体が苦しいなら、手続きの見直しを
「カードが使えなくて生活が回らない」という状態が続いているなら、それはカードの問題ではなく、今の返済計画が生活実態に合っていないサインかもしれません。任意整理の和解内容を組み直す、個人再生や自己破産へ切り替えるといった選択肢は残っています。多くの法律事務所が借金の無料相談を受け付けており、受任通知が出れば督促は止まります。
まとめ
- 任意整理中の新規クレジットカード発行は、信用情報の記録と割賦販売法の調査義務により現実的に不可能。
- 「作れた」の多くは、家族カード・デビット・プリペイド・対象外の既存カード・期間経過後のいずれか。
- 対象外にしたカードも、途上与信で利用停止・強制解約になることが多い。引き落としは早めに口座振替へ。
- ダメ元の申込は、6か月残る申込履歴と和解破綻のリスクだけが残る。
- ネット決済はデビット、ETCはETCパーソナルカードで代替できる。
- 目安は完済から約5年。自己破産・個人再生の官報情報はKSCに7年。
- 生活が回らないなら、カードではなく手続きの見直しを無料相談で検討する。
カードが作れない期間は、信用を失っている時間ではなく、返済実績という新しい信用を積み上げている時間です。順番を守れば、必ず戻ってきます。
よくある質問(任意整理中のクレジットカード)
任意整理中でもクレジットカードは作れますか?
新規発行は現実的にできません。信用情報機関に異動情報が登録されているうえ、クレジットカード会社には割賦販売法により支払可能見込額の調査が義務づけられており、その際に指定信用情報機関の情報を使うことが定められているためです。
任意整理の対象から外したカードは使い続けられますか?
しばらく使えることはありますが、カード会社は契約後も定期的に信用情報を確認するため、利用停止や強制解約になる可能性が高いです。止まる前提で、公共料金や携帯料金の引き落としは口座振替へ切り替えておくことをおすすめします。
任意整理中にクレジットカードに申し込むとどうなりますか?
審査に通らないうえ、CICでは申込情報が照会日から6か月間保有されるため、その履歴が次の審査で不利に働きます。さらに、交渉中の新たな信用取引は和解の破綻や代理人の辞任につながる恐れがあります。必要が生じたら、まず担当の弁護士・司法書士へ相談してください。
クレジットカードがないとETCは使えませんか?
使えます。NEXCO3社・首都高速・阪神高速・本四高速の6社が共同で発行するETCパーソナルカード(パソカ)は、あらかじめデポジット(保証金)を預けることで利用でき、クレジットカードの審査を必要としません。支払いは口座振替です。
任意整理後、いつからクレジットカードを作れますか?
和解した返済を完済してから約5年が目安です。CICは「契約期間中および契約終了後5年以内」、JICCは2019年10月1日以降の契約について「契約継続中および契約終了後5年以内」と公表しています。申し込む前に各機関の本人開示で記録が消えたことを確認すると確実です。
出典
- 株式会社シー・アイ・シー(CIC)「CICが保有する信用情報」
- 株式会社日本信用情報機構(JICC)「信用情報の内容と登録期間」
- 一般社団法人全国銀行協会「全国銀行個人信用情報センター」
- e-Gov法令検索「割賦販売法」
- ETCパーソナルカードWebサービス(パソカ)
- 日本司法支援センター(法テラス)
更新履歴
- 2026年7月25日:全面改稿。割賦販売法上の支払可能見込額調査の位置づけを追加し、信用情報機関の登録期間を各機関の公表内容に基づき更新。ETCパーソナルカードなど具体的な代替手段と、途上与信による既存カード停止への備えを追記しました。

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