「債務整理中でも住宅ローンが通った」という事例を探して、この記事にたどり着いた方が多いと思います。結論からお伝えします。債務整理の手続き中に住宅ローンの審査に通ることは、現実にはありません。住宅ローンは個人向け融資のなかで最も審査が厳格な商品だからです。
ただし、多くの方が本当に知りたいのは「今の家をどうすれば守れるか」ではないでしょうか。その答えははっきりしています。すでに住宅ローンを組んでいる家は、債務整理をしても手放さずに済む方法があります。この記事では、審査の現実と、家を残すための具体的な制度、そして将来もう一度組むための順序を解説します。
- 債務整理中の住宅ローン新規審査は通りません。信用情報の記録に加え、官報情報が全国銀行個人信用情報センター(KSC)に7年残るためです。
- 今の家を守りたいなら、任意整理で住宅ローンを対象から外すか、個人再生の住宅資金特別条項(住宅ローン特則)を使う方法があります。
- 自己破産では原則として自宅を手放すことになります。どの手続きを選ぶかで結論が変わるため、着手前の相談が決定的に重要です。
- 新規に組めるようになる目安は、任意整理なら完済から約5年、自己破産・個人再生なら官報情報が消える7年を見ておくのが安全です。
- 制度・登録期間は、CIC・JICC・全国銀行個人信用情報センター(KSC)・e-Gov法令検索・住宅金融支援機構などの公表資料を確認して記載しています。参照先は記事末尾の「出典」にまとめています。
- 執筆は、自身も多重債務からの立て直しを経験した LingoTimes 編集部が担当しています。実体験に基づく部分は「筆者の経験」と明示し、一般論と区別しています。
- 住宅ローンの審査基準は金融機関ごとに非公開のため、特定の金融機関について「通る・通らない」を断定することはしません。
- 本記事は情報提供を目的としたもので、個別の法律相談ではありません。住宅を残せるかどうかは事案によって結論が変わるため、必ず弁護士・司法書士にご相談ください。
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債務整理中に住宅ローンが通らない、3つの理由
理由1:住宅ローンはKSCが参照され、官報情報が7年残る
銀行の住宅ローン審査では、全国銀行個人信用情報センター(KSC)が参照されます。KSCは官報に掲載される破産・民事再生の情報を保有しており、その登録期間は2022年11月4日から10年が7年に短縮されました。逆に言えば、自己破産や個人再生をした場合、銀行の住宅ローンでは7年という長い期間が壁になります。
あわせて、CICはクレジット情報を「契約期間中および契約終了後5年以内」、JICCは2019年10月1日以降の契約について債務整理・破産申立を「契約継続中および契約終了後5年以内」保有すると公表しています。
理由2:保証会社の審査を通らなければ実行されない
住宅ローンは、金融機関の審査に加えて保証会社の保証が実行の条件になっているのが一般的です。金融機関の担当者が親身でも、保証会社が信用情報を照会した時点で結論は決まります。「事前審査は通ったのに本審査で落ちた」というのは、多くがこの段階です。
理由3:返済期間が長く、金額が大きい
数千万円を数十年かけて返す契約である以上、金融機関は返済の安定性を最も重く見ます。返済比率(年収に占める年間返済額の割合)、勤続年数、雇用形態、他の借入残高——債務整理中はこれらすべてが不利に働きます。「審査が甘い住宅ローン」を探すという発想が成り立たないのは、このためです。
「フラット35なら信用情報を見ない」という噂がありますが、正しくありません。フラット35でも申込者の信用情報は確認されます。保証会社を使わない仕組みである点は民間ローンと異なりますが、債務整理の記録がある状態で通る商品ではありません。
「債務整理中でも住宅ローンが通った」という事例の正体
ケース1:配偶者の単独名義だった
本人ではなく、信用情報に問題のない配偶者が単独で契約したケースです。この場合、本人の信用情報は原則として審査対象になりません。ただし収入合算やペアローンにすると本人も審査対象になりますし、本人の債務状況を隠して申し込めば重大な問題になります。ここは自己判断せず、必ず専門家に相談してください。
ケース2:すでに登録期間が過ぎていた
「債務整理中」と書かれていても、実際には完済や免責から5〜7年が経過していたケースです。体験談は時系列が曖昧なまま拡散しがちです。
ケース3:新規ではなく、既存の住宅ローンを守り切った
これが実は最も多く、そしていちばん再現性のあるケースです。新しく組んだのではなく、すでにあった住宅ローンを債務整理から切り離して家を残した、という話です。次章で詳しく説明します。
【本題】今の家を守る2つの方法
方法1:任意整理で住宅ローンを対象から外す
任意整理は、整理する債権者を選べる手続きです。住宅ローンを対象から外し、消費者金融やクレジットカードの債務だけを整理すれば、住宅ローンはこれまでどおり返済を続けられ、家を失うことはありません。裁判所を使わないため官報にも載りません。
毎月の負担が減るのは他の債務の分だけなので、住宅ローン自体の返済を続けられることが前提です。住宅ローンの支払いが既に苦しい場合は、次の方法を検討します。
方法2:個人再生の「住宅資金特別条項(住宅ローン特則)」
個人再生には、民事再生法が定める住宅資金貸付債権に関する特則があります。これを使うと、住宅ローンはそのまま払い続けながら、他の借金を大幅に圧縮できます。自宅を手放さずに債務を整理できる、極めて重要な制度です。
利用には、住宅の用途や抵当権の状況などいくつかの要件があり、すべての事案で使えるわけではありません。ただ、「家を残したい」という希望がある場合に、真っ先に検討すべき選択肢であることは間違いありません。
自己破産を選ぶと、原則として自宅は手放すことになる
自己破産では、価値のある財産は原則として処分の対象になります。住宅ローンが残っている自宅も、多くの場合は手放すことになります。だからこそ、着手前にどの手続きを選ぶかが決定的に重要です。
家を残せるかどうかは、手続きを始める前の相談で決まります。すでに自己破産の申立てを進めてしまってから「やはり家を残したい」となっても、選び直しには時間も費用もかかります。住宅がある方は、最初の無料相談の段階で「家を残したい」と明確に伝えてください。
住宅ローンの返済自体が苦しいときの選択肢
債務整理より前に検討できる手段もあります。
- 金融機関へのリスケジュール(返済条件の変更)相談:返済期間の延長や一定期間の元金据置に応じてもらえる場合があります。滞納する前に相談するほど選択肢が広がります。
- 借り換え:信用情報に問題がない段階であれば、金利や期間の見直しで負担を下げられることがあります。
- 任意売却:返済継続が難しい場合、競売より有利な条件で売却できる可能性があります。競売になる前に動くことが重要です。
筆者の経験からも申し上げると、いちばん取り返しがつかないのは「滞納してから相談する」ことです。1回でも遅れれば信用情報に記録が残り、リスケジュールや借り換えの選択肢が一気に狭まります。苦しいと感じた段階で、まだ払えているうちに動いてください。
将来もう一度、住宅ローンを組むために
時期の目安
- 任意整理:和解した返済(通常3〜5年)の完済から約5年。
- 個人再生・自己破産:CIC・JICCは5年が目安ですが、銀行の住宅ローンではKSCの官報情報7年が実質的な壁になります。
期間中にやっておくべきこと
- 和解や再生計画の返済を一度も遅れずに終える:これが最大の信用回復です。
- 頭金を貯める:自己資金の厚みは、審査で数少ない「自分でコントロールできる要素」です。
- 勤続年数を積む:期間中の転職は審査上マイナスに働きます。
- 他の借入を作らない:自動車ローンやカードのリボ残高は返済比率を圧迫します。
- 期間経過後に本人開示で確認してから申し込む:CIC・JICC・KSCはいずれも本人開示に対応しています。記録が残ったまま申し込むと、申込履歴だけが残ります。
- 整理した債権者と同じグループは避ける:社内の取引記録は登録期間とは別に残り続けます。
まずは無料相談で、家を残せるかを確認する
「債務整理をしたら家を失う」と思い込んで相談をためらう方が多いのですが、実際には手続きの選び方次第で家は残せます。多くの法律事務所が借金の無料相談を受け付けており、受任通知が出れば督促は止まります。住宅がある方は、その旨を最初に伝えてください。
まとめ
- 債務整理中に住宅ローンの新規審査が通ることは現実にはない。
- 銀行の住宅ローンではKSCが参照され、自己破産・個人再生の官報情報は7年残る。
- 「通った事例」の多くは、配偶者の単独名義か、期間経過後か、既存ローンを守り切ったケース。
- 今の家を守るなら、任意整理で住宅ローンを対象外にするか、個人再生の住宅資金特別条項を使う。
- 自己破産では原則として自宅を手放すことになるため、手続きの選択が決定的に重要。
- 返済が苦しい段階では、滞納する前にリスケジュールや任意売却を検討する。
- 再挑戦の目安は任意整理で完済から約5年、自己破産・個人再生は7年。頭金と勤続年数で差がつく。
よくある質問(債務整理中の住宅ローン)
債務整理中に住宅ローンは組めますか?
組めません。信用情報機関に記録が残っているうえ、住宅ローンは保証会社の保証が実行の条件となっているのが一般的で、その保証会社が必ず信用情報を照会するためです。銀行の審査では全国銀行個人信用情報センター(KSC)も参照されます。
債務整理をすると今の家は必ず手放すことになりますか?
いいえ。任意整理なら住宅ローンを対象から外して返済を続けられますし、個人再生には民事再生法の住宅資金特別条項(住宅ローン特則)があり、住宅ローンを払い続けながら他の借金を圧縮できます。ただし自己破産では原則として自宅は処分の対象になります。手続きを選ぶ前に相談してください。
自己破産後、何年で住宅ローンを組めますか?
CIC・JICCの記録は免責確定から約5年が目安ですが、銀行の住宅ローンでは全国銀行個人信用情報センターの官報情報が7年残るため、7年を見ておくのが安全です。この期間は2022年11月4日に10年から7年へ短縮されました。
フラット35なら債務整理中でも通りますか?
通りません。フラット35でも申込者の信用情報は確認されます。保証会社を使わない仕組みである点は民間ローンと異なりますが、債務整理の記録がある状態で審査を通過できる商品ではありません。
配偶者名義なら住宅ローンを組めますか?
配偶者が単独で契約する場合、本人の信用情報は原則として審査対象になりません。ただし収入合算やペアローンにすると本人も審査対象になります。債務の状況を隠しての申込は重大な問題になり得るため、必ず事前に弁護士・司法書士へ相談してください。
出典
- 一般社団法人全国銀行協会「全国銀行個人信用情報センター」
- 株式会社シー・アイ・シー(CIC)「CICが保有する信用情報」
- 株式会社日本信用情報機構(JICC)「信用情報の内容と登録期間」
- e-Gov法令検索「民事再生法」(第10章 住宅資金貸付債権に関する特則)
- e-Gov法令検索「破産法」
- 住宅金融支援機構「フラット35」
- 日本司法支援センター(法テラス)
更新履歴
- 2026年7月25日:全面改稿。KSCの官報情報が7年へ短縮された点を反映し、個人再生の住宅資金特別条項による住宅維持の解説を追加。「通った事例」の内訳を整理し、フラット35に関する誤解の訂正と出典を明記しました。

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