SNS広告のターゲティング設計|ブロード・類似・リタゲの使い分け
ブロード配信、類似(ルックアライク)、リターゲティング、興味関心ターゲティングの特徴と使い分けを整理。クリエイティブがターゲティングの役割を担うという考え方と、プライバシー規制による計測・配信環境の変化も解説します。
「30代女性、美容に興味あり、都市部在住」。こうした条件を細かく重ねてターゲットを絞り込む作業は、SNS広告の設定でいちばん「運用している感」が得られる部分かもしれません。ところが近年は、絞り込むほど成果が上がるという単純な関係は成り立ちにくくなっています。
背景には2つの変化があります。1つは配信システムの機械学習が進み、人が条件を指定しなくても成果の出やすい相手を見つけられるようになったこと。もう1つは、プライバシー保護の流れの中で、媒体が利用できるデータそのものが変わってきたことです。
この記事では、代表的な4つの手法の使い分けと、今の環境での設計の考え方をまとめます。機能の名称や設定項目は変わりやすいので、設定時は各媒体の公式ヘルプを確認してください。
4つの手法の特徴と使い分け
| 手法 | 対象 | 強み | 弱み・注意点 |
|---|---|---|---|
| ブロード配信 | 年齢・地域など最低限の条件のみで広く配信 | 対象が広く、機械学習が相手を探す余地が大きい。規模を伸ばしやすい | 成果データが少ない初期は不安定になりやすい。クリエイティブの質に成果が左右される |
| 類似(ルックアライク) | 既存顧客などのリストに似た特徴を持つ人 | 元データの質が高ければ、初期から見込みの高い層に届きやすい | 元になるリストの量と質に依存する。計測環境の変化で精度が揺らぐことがある |
| リターゲティング | サイト訪問者、動画視聴者など接触済みの人 | 検討が進んだ層なので獲得効率が高く出やすい | 対象規模が小さい。新規の流入がなければ枯れる。同じ人への出しすぎに注意 |
| 興味関心 | 媒体が推定した興味・行動カテゴリに該当する人 | 訴求と関連の強いカテゴリがあれば、初期の足がかりになる | 推定の精度は外から見えない。カテゴリが廃止・統合されることがある |
ブロード配信
条件をほとんど付けずに配信し、誰に届けるかを配信システムに任せる方法です。コンバージョンデータが安定して貯まっているアカウントでは、人が考えた絞り込みよりも、ブロードのほうが結果が良いことも珍しくありません。人が想定していなかった層を拾えるのも利点です。
類似(ルックアライク)
購入者リストなどを元に、似た特徴を持つユーザーへ配信する方法です。成否を分けるのは元データの質です。全購入者よりも、リピート購入者や高単価の顧客など「本当に増やしたい顧客」に絞ったリストのほうが、狙いが明確になります。
リターゲティング
接触済みの人に再度広告を出す方法です。獲得単価は低く出やすいのですが、これを見て予算を寄せすぎるのは禁物です。リターゲティングの対象者は、新規向けの配信や他の流入施策が連れてきた人たちです。新規向けを絞ってリターゲティングだけ残すと、しばらくして対象が枯れ、全体の獲得数が落ちていきます。
興味関心
媒体が用意したカテゴリから選ぶ方法です。立ち上げ期に、商材と明らかに関連の深いカテゴリを足がかりとして使うのは有効です。ただし、カテゴリごとに広告セットを量産するとデータが分散するため、関連するカテゴリは1つにまとめます。
クリエイティブがターゲティングの役割を担う
配信システムは、広告に反応した人の特徴を学び、似た人へ配信を広げていきます。つまり「誰が反応するか」を決めているのは、設定画面の条件以上に、クリエイティブの中身です。
例として、同じ学習教材を売る場合を考えます。「中学受験を考え始めたご家庭へ」と書いた広告には受験を意識する保護者が反応し、「宿題に1時間かかる子の親御さんへ」と書いた広告には学習習慣に悩む保護者が反応します。配信対象の設定が同じブロードでも、広告の冒頭で誰に呼びかけるかによって、集まる人は変わります。
この考え方に立つと、設計の手順は次のようになります。
- 届けたい相手を、属性ではなく「状況」や「悩み」で複数書き出す
- それぞれの相手が自分ごとだと感じる呼びかけ・画像・冒頭の数秒を考える
- 配信対象は広めに設定し、訴求の異なるクリエイティブを同じ広告セットに入れる
- どの訴求に反応が集まったかを見て、反応の良い切り口を深掘りする
- 反応が悪い切り口は、対象がいないのか、表現が弱いのかを分けて考える
なお、ユーザーの個人的な属性や悩みを名指しで断定するような表現は、媒体の広告ポリシーに抵触する場合があります。表現の可否は各媒体の審査基準を確認してください。
プライバシー規制による環境の変化
計測と配信を取り巻く環境の変化も押さえておきます。大きな流れは次のとおりです。
- OSやブラウザの仕様変更により、アプリやサイトをまたいだユーザーの追跡が制限される方向にある
- 各国・地域で個人データの取り扱いに関する法規制が整備され、同意の取得が求められる場面が増えている
- その結果、媒体が把握できるコンバージョンは実際より少なくなることがあり、一部は統計的な推定で補われている
- センシティブな属性に関わるターゲティング項目は、媒体側で縮小・廃止される傾向にある
実務への影響は主に3つです。リターゲティングの対象リストが貯まりにくくなること、類似配信の元データの精度が揺らぐこと、管理画面の成果数値と自社の売上データとのずれが大きくなりやすいことです。
対策としては、サーバー側からコンバージョンを送信する仕組みの導入、自社で同意を得て取得した顧客データ(ファーストパーティデータ)の整備、管理画面の数値だけに頼らず自社の実売上と突き合わせて評価する習慣、の3つが基本になります。法規制に関する記述は一般的な説明です。自社のデータ取得や利用が適法かどうかの最終判断は、専門家に確認してください。
フェーズ別の組み立て方
アカウントの成熟度に応じて、手法の比重を変えていきます。
| フェーズ | 状況 | 組み立て方の例 |
|---|---|---|
| 立ち上げ期 | 成果データがほぼない | 関連の強い興味関心や、手持ちの顧客リストの類似を足がかりにする。並行してブロードも小さく試す |
| 拡大期 | 成果データが安定して貯まってきた | ブロードの比重を上げ、訴求違いのクリエイティブ検証に力を移す。リターゲティングは別の広告セットで一定額を確保 |
| 成熟期 | 獲得数が頭打ちになってきた | 新しい切り口のクリエイティブで新しい層を開拓する。リターゲティングへの予算の寄りすぎを点検する |
FIG.フェーズごとのターゲティングの組み立て
- 立ち上げ期成果データがほぼない
- 拡大期成果データが安定して貯まってきた
- 成熟期獲得数が頭打ちになってきた
まとめ
ターゲティングは「細かく絞るほど良い」時代から、「広く配信し、クリエイティブで相手を選ぶ」考え方へ重心が移っています。ブロード、類似、リターゲティング、興味関心にはそれぞれ役割があり、アカウントのフェーズに応じて比重を変えていくのが現実的です。
同時に、プライバシー保護の流れによって、媒体が見えている範囲は以前より狭くなっています。設定画面の条件に頼りきるのではなく、計測基盤を整え、自社のデータと突き合わせて評価し、誰に何を伝えるかをクリエイティブで作り込む。この3点が、環境が変わっても通用するターゲティング設計の土台になります。
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