AI活用の前に計測を整える理由|何を成果とするかを先に決め、測れる状態にする
広告運用にAIを取り入れる前に、計測を整えておくべき理由を発注する側の担当者向けに整理しました。測れないと起きること、成果の定義を社内と代理店で合意する方法、計測を整える手順、数字に表れないものの扱い方を説明します。
AIエージェント(指示を受けて、調べる・書く・まとめるといった作業を順に進めるAIの仕組み)を広告運用に取り入れようとすると、「どの作業を任せるか」「どのサービスを使うか」に目が向きがちです。ところが、その前に確かめておきたいことがあります。広告の成果を、正しく数えられているかどうかです。
AIは、広告の案を多く出したり、数字をまとめたりする作業を速く進められます。しかし、どの案が良かったのかを判断する材料は、計測された数字しかありません。数字が欠けていたり、間違っていたりすると、速く動くほど間違った方向に進んでしまいます。
この記事では、AIを活用する前に計測を整えておくべき理由と、発注する側の担当者が自社と代理店のあいだで決めておくことを整理します。
AIは「何が良かったか」を数字でしか知れない
人の担当者であれば、営業の様子やお客様の声から「この広告から来た相談は質が良い」と感じ取れることがあります。AIは、そうした現場の感覚を自分で集めることができません。渡された数字や記録をもとに、良し悪しを判断します。
そのため、AIの働きは計測の質に強く左右されます。成果が正しく数えられていれば、AIが出した案の中から良いものを見つけやすくなります。成果の数え方がずれていれば、AIは「数字の上では良く見えるが、実際には売上につながらない案」を選び続けるおそれがあります。
AIを使うと試せる案の数が増えるため、この影響はより大きくなります。1か月に数本しか試さないなら、担当者が一つずつ様子を見て補えます。数十本を同時に比べるようになると、人の目で補える範囲を超え、数字の正しさがそのまま判断の正しさになります。
測れない状態で起きること
計測が整っていないまま広告やAIの活用を進めると、次のようなことが起きやすくなります。自社の状態がどれに近いかを確かめてみてください。
| 計測の状態 | 起きやすいこと |
|---|---|
| 成果の設定が一部のページで動いていない | 実際より成果が少なく見え、良い広告を止めてしまう |
| 同じ成果が二重に数えられている | 実際より成果が多く見え、予算を増やしすぎる |
| 成果の定義が人によって違う | 報告のたびに数字の意味を確かめることになり、判断が遅れる |
| 電話や来店などWebの外の成果を記録していない | 広告の効果を小さく見積もり、必要な予算まで削ってしまう |
| 成果の先(契約や購入の継続)を追えていない | 件数は多いが利益につながらない広告を増やしてしまう |
どれも、AIを使うかどうかに関係なく起きる問題です。ただ、AIで作業が速くなると、間違った数字にもとづく判断が短い期間に積み重なります。気づいたときには、多くの予算を誤った方向に使っていたということになりかねません。
何を成果とするかを社内と代理店で合意する
計測を整える最初の一歩は、ツールの設定ではなく、何を成果として数えるかを決めることです。問い合わせの送信、予約の完了、資料の請求、購入など、事業によって成果は違います。
成果は1つに絞り、それを測るための中間の数字を2〜3つ添える形にすると、話がぶれにくくなります。例えば、問い合わせを成果とするなら、問い合わせページを見た人の数や、電話番号を押した回数などを中間の数字として持っておきます。
決めた内容は、社内の関係者と代理店の両方で共有します。営業担当が「質の低い相談が増えた」と感じていても、広告の報告では件数が伸びていると評価されている、というずれはよく起きます。成果の定義に「営業が商談に進めた件数」のような先の段階も含めるかどうかを、始める前に話し合っておくと、後の報告で食い違いが起きにくくなります。
AIに数字の集計や分析を任せる場合も、この定義を前提として渡します。定義があいまいなままでは、AIがまとめた報告も、読む人によって受け取り方が変わってしまいます。
計測を整える手順
成果の定義が決まったら、実際に測れる状態にします。代理店に任せる部分があっても、次の流れは発注する側が把握しておくと安心です。
- 成果として数えるものを1つ決め、中間の数字を2〜3つ添える
- アクセス解析と広告の成果の設定が、必要なページすべてで動いているかを確かめる
- 自分で問い合わせや予約を試し、数字が1件だけ増えるかを確かめる
- 電話や来店など、Webの外で起きる成果の記録方法を決める
- 契約や継続など、成果の先の段階をどこで記録するかを決める
- 設定の内容と、誰が管理しているかを一覧にして残す
3つ目の「自分で試す」は、手間に見えて効果の大きい確認です。数字が増えない、2件増える、といったずれは、ここで見つかることが少なくありません。Webの外の成果を広告の管理画面に取り込む仕組みは媒体ごとに違い、仕様も変わるため、執筆時点の内容を断定せず、公式ヘルプや代理店に確認してください。
この手順は一度で終わりではありません。ページの作り直しやフォームの変更のたびに、計測が止まることがあります。変更のあとには3つ目の確認をもう一度行う、と決めておくと安心です。
FIG.計測を整える手順
- 成果を1つ決める中間の数字を2〜3つ添える
- 設定の動作を確かめる必要なページすべてで
- 自分で試す数字が1件だけ増えるか
- Webの外の成果の記録を決める電話や来店
- 成果の先の記録を決める契約や継続
- 設定と管理者を一覧に残す
数字に表れないものをどう扱うか
計測を整えても、すべてが数字になるわけではありません。広告を見て会社の名前を覚えてもらえた、あとから指名で検索された、といった効果は、成果の数字にはっきりとは表れにくいものです。
こうした効果を無理に数字にしようとすると、かえって判断を誤ることがあります。大切なのは、「数字で判断すること」と「人が判断すること」を分けておくことです。例えば、獲得単価のように数字で比べられるものはAIの集計を材料にし、表現が自社らしいか、お客様にどう受け取られるかといった点は、人が確かめて決めます。
AIの活用が進むほど、数字で判断できる範囲は広がります。その分、数字の外にあるものを誰が見るかを決めておくことが、発注する側の大事な役割になります。
まとめ
AIは、渡された数字をもとに良し悪しを判断します。そのため、計測が欠けていたり、ずれていたりすると、速く動くほど間違った方向に進んでしまいます。AIを取り入れる前に、まず計測を整えておくことが、活用の効果を確かめるための前提になります。
最初に決めるのは、何を成果として数えるかです。社内と代理店で定義を合わせ、自分で試して数字が正しく増えるかを確かめます。Webの外の成果や、成果の先の段階をどう記録するかも決めておきます。
そのうえで、数字で判断することと人が判断することを分けておけば、AIの速さを成果につなげやすくなります。どのサービスを使うかを考える前に、まず自社の計測を点検するところから始めてみてください。
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