計測・分析

アトリビューションの考え方|ラストクリック評価の限界と間接効果の活かし方

成果をどの広告の貢献とみなすかを決めるアトリビューションの考え方を解説します。ラストクリック評価の限界、データドリブンなどのモデルの違い、媒体ごとの計測期間の差による重複計上、間接効果を予算判断に使う方法を整理します。

No.28読了目安 5分8A GARAGE 編集部

サッカーで得点した選手だけを評価し、パスを出した選手を評価しなかったら、チームはどうなるでしょうか。全員がシュートだけを狙うようになり、結果として得点は減っていきます。広告の評価でも、同じことが起こります。

ユーザーは、1回の広告接触だけで購入を決めることはあまりありません。SNSで知り、比較記事を読み、数日後に社名で検索して申し込む、といった経路をたどります。この一連の接触のうち、どれにどれだけ成果を割り振るかを決める考え方が、アトリビューションです。

ラストクリック評価の限界

ラストクリックは、成果の直前にクリックされた広告に貢献のすべてを割り振る方法です。分かりやすく、説明もしやすいため、長く標準として使われてきました。ただし、次のような偏りがあります。

  • 刈り取り型の施策が過大評価される: 指名検索の広告やリターゲティングは、すでに買う気になっている人が最後に通る場所です。成績が良く見えるのは当然で、その広告が需要を生んだとは限りません。
  • 認知・検討段階の施策が過小評価される: ディスプレイ広告SNS広告動画広告などは、最初の接点になることが多く、ラストクリックでは成果がほとんど付きません。
  • 削減の判断を誤りやすい: 成果が付いていない施策を止めた結果、少し遅れて指名検索の量が減り、全体の成約も落ちる、ということが起こりえます。

ラストクリックが間違っているわけではありません。「最後のひと押しになったのは何か」を見る指標としては有効です。問題は、それだけを根拠に予算全体を配分してしまうことにあります。

アトリビューションモデルの考え方

成果の割り振り方には、いくつかの考え方があります。

考え方割り振り方向いている見方
ラストクリック最後の接触にすべて最後のひと押しになった施策を知る
ファーストクリック最初の接触にすべて新しいユーザーを連れてきた施策を知る
均等・位置重視など決めたルールで複数の接触に分ける経路全体を大まかに評価する
データドリブン実際のデータから貢献度を推定して分けるデータ量が十分なアカウントでの総合評価

データドリブンは、成果に至った経路と至らなかった経路を比べ、ある接触があった場合に成果の起きやすさがどれだけ変わるかを推定して、貢献を配分する考え方です。ルールを人が決めない分、実態に近づきやすい一方で、計算の中身は外から見えず、データが少ないと推定が安定しません。

執筆時点では、Google広告やga4-for-adsGA4ではデータドリブンが中心となり、選べるルールベースのモデルは以前より絞られています。選択肢や既定値は変わるため、設定の際は公式ヘルプで確認してください。

もう一つ知っておきたいのは、どのモデルもその計測ツールが把握できた接触だけを対象にしている点です。媒体の管理画面のアトリビューションは、基本的にその媒体の中の接触しか見ていません。端末をまたいだ行動や、計測への同意がないユーザーの行動も抜け落ちます。モデルを変えれば真実が分かる、というものではありません。

FIG.同じ成果でも、モデルによって評価が変わる(例)

最初に触れた広告途中で触れた広告最後にクリックした広告ラストクリック0%0%100%ファーストクリック100%0%0%均等に配分33%33%33%
3つの広告に順に触れてから成果に至った場合の、貢献の割り振りの例です。

計測期間(ウィンドウ)の違いと重複計上

媒体ごとに、広告への接触から何日後までの成果を自分のものとして数えるか、という期間が決まっています。これが計測期間、いわゆるウィンドウです。クリック後の期間と、表示だけでクリックしなかった場合の期間が別々に設定されている媒体もあります。既定の日数は媒体によって異なり、変更されることもあるため、各媒体の現在の設定を確認してください。

この違いが、重複計上を生みます。架空の例で考えます。

例:あるユーザーが、月曜にMeta広告をクリックし、木曜にGoogleの検索広告をクリックして、同じ木曜に購入したとします。Meta広告は期間内のクリックなので1件と数え、Google広告も1件と数えます。実際の購入は1件ですが、管理画面の合計は2件になります。

媒体の管理画面の数字を単純に足し上げると、実際の成約数を上回るのはこのためです。各媒体は他媒体の接触を知らないので、どちらも自分のルールに沿って正しく数えています。

実務では、次のように整理すると混乱しません。

  1. 事業全体の成果は、受注データなど自社で持つ実数を基準にします。
  2. 媒体をまたぐ比較は、GA4など一つの物差しで測った数字で行います。
  3. 媒体の管理画面の数字は、その媒体の中での最適化と、時系列の変化を見るために使います。
  4. 各媒体のウィンドウの設定を一覧にして、レポートの注記に残します。設定が違う数字を横に並べて比べないためです。
  5. 管理画面の合計と実数の比率を毎月記録し、比率が大きく動いたときに原因を調べます。

間接効果を意思決定に使う

間接効果は「あるはず」で終わらせず、判断に使える形にすることが大切です。方法は大きく3つあります。

経路と補助的な貢献を確認する

GA4などで成果までの経路を見て、その施策が最初や途中の接点としてどれだけ登場しているかを確認します。ラストクリックでは成果が少なくても、経路の序盤に多く現れるなら、入口としての役割を果たしていると考えられます。

止めてみる・増やしてみる

もっとも確かなのは、実際に変化を与えて全体の数字を見ることです。特定の地域や期間だけ配信を止める、または増やして、指名検索の量や全体の成約数がどう動くかを比べます。季節や他の施策の影響を受けるため、期間は十分に取り、同時に他の大きな変更を入れないようにします。

施策の役割ごとに評価指標を分ける

すべての施策を同じ獲得単価で評価すると、認知の施策は必ず負けます。刈り取りの施策は獲得単価、検討段階の施策は成果に近いページへの到達や再訪問、認知の施策は新規ユーザーの流入と指名検索の増減、というように役割に合った指標を先に決めておきます。

注意したいのは、間接効果が「成果の出ていない施策を続ける言い訳」になりやすいことです。続けるなら、何の数字がどうなれば効果ありとみなすのか、どうなればやめるのかを、配信前に決めておきます。

まとめ

ラストクリックは最後のひと押しを測る指標であり、それだけで予算を配分すると、需要を生んでいる施策を削ってしまうおそれがあります。データドリブンなどのモデルは実態に近づく助けになりますが、計測できた範囲の推定であることは変わりません。

媒体ごとにウィンドウが違い、同じ成果が重複して数えられることを前提に、全体は実数、媒体間の比較は一つの物差し、媒体内の調整は管理画面と使い分けてください。間接効果は、経路の確認、配信の増減による検証、役割別の指標という形に落とし込むことで、予算の判断に使えるようになります。

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