複数の代理店・制作会社を使うときの交通整理|役割分担・数字の一本化・窓口
検索広告とSNS広告で依頼先が違う、ホームページは別の制作会社が持っている。そんな体制で起きやすい混乱と、役割分担の決め方、数字を1つにそろえる考え方、自社に窓口を置く理由、交通整理の手順を説明します。
広告の運用を続けていると、依頼先が少しずつ増えていくことがあります。検索広告は以前からの代理店に、SNS広告は得意な別の会社に、ホームページは制作会社に、という形です。それぞれの会社は自分の担当をきちんとこなしているのに、全体としては成果が見えにくくなる、ということが起こります。
原因の多くは、依頼先の力量ではなく、会社どうしの「間」にあります。誰が何を決めるのか、どの数字を正しいとするのか、連絡をどこに集めるのか。これが決まっていないと、同じことを二重に数えたり、誰も手を付けない作業が残ったりします。
この記事では、複数の代理店や制作会社に仕事を分けて頼むときに、発注する側が整えておきたい3つのこと、役割分担・数字の一本化・窓口について整理します。
依頼先が複数になると起きやすいこと
まず、よくある混乱を並べておきます。どれも特定の会社が悪いわけではなく、取り決めがないことから起こります。
| 起きやすいこと | 主な原因 |
|---|---|
| 報告された成果の合計が、実際の問い合わせ件数より多い | 同じ1件を、それぞれの媒体が自分の成果として数えている |
| ページを直したら、別の会社の計測が止まった | ページと計測の担当が違い、変更の連絡が届いていない |
| 同じ言葉で検索広告を出し合っている | どの範囲を誰が受け持つかが決まっていない |
| 成果が落ちたとき、原因の押し付け合いになる | 全体を見て判断する役割がいない |
| 担当者が何社とも同じ説明を繰り返している | 情報を共有する場所と時期が決まっていない |
特に1つ目は見落とされがちです。広告の成果の数え方は媒体ごとに違い、1人のお客様が検索広告とSNS広告の両方に触れてから問い合わせると、両方の管理画面に成果として記録されることがあります。この重複計上(同じ成果を複数の所で数えること)は不正ではなく、仕組みの違いから起こるものです。
役割は「作業」ではなく「決める範囲」で分ける
役割分担というと、「検索広告はA社、SNS広告はB社」のように作業で分けることを考えがちです。それ自体は自然ですが、作業の分担だけでは、会社をまたぐ判断が宙に浮きます。媒体の間で予算をどう配分するか、ページの変更をいつ行うか、といった判断です。
そこで、作業に加えて「誰が何を決めるか」を書き出しておきます。例として、次のような分け方があります。
- 自社が決めること: 目的と成果の定義、全体の予算と媒体ごとの上限、ページの変更の可否、表現の最終確認
- 各代理店が決めること: 担当する媒体の中での配信の調整、広告文や画像の案、担当範囲の中での予算の使い方
- 制作会社が決めること: ページの作りと公開の手順、ただし計測に関わる変更は事前に共有する
全体の予算配分を1社に任せる形もありますが、その場合は、その会社が他社の媒体の数字も見られることが前提になります。見られない状態で配分だけを任せると、判断の材料が足りません。どちらにするかは、契約の前に決めておくのが安全です。
検索広告を複数の会社が扱う場合は、受け持つ商品やキーワードの範囲も分けておきます。同じ言葉に自社の広告どうしが入札し合うと、互いに単価を押し上げてしまうおそれがあります。
数字は1つの「正」にそろえる
複数の依頼先から届くレポートは、それぞれの媒体の管理画面の数字で書かれています。そのまま足し合わせると、重複を含んだ合計になります。そこで、全体の成果を判断するときに使う数字を1つ決めておきます。
正とする数字の候補は、自社の問い合わせの記録や受注の台帳、あるいはサイト全体を見ているアクセス解析の数字です。どれを使うかは会社によって違ってよいのですが、全社で同じものを使うことが大切です。各媒体の管理画面の数字は、その媒体の中で広告どうしを比べる材料として使い分けます。
あわせて、次の点も依頼先と共有しておくと、レポートを並べて読みやすくなります。
- 成果として数えるものの定義(問い合わせの送信、予約の完了など)
- 集計の期間と締めの日
- 計測の設定を誰が管理し、変更するときは誰に知らせるか
計測の設定の管理者がはっきりしていないと、ページの変更やタグの追加で数字が止まっても、気づくのが遅れます。設定と管理者を一覧にして、自社で持っておくと安心です。
自社に窓口を1人置く
依頼先が複数あるとき、会社どうしで直接やり取りしてもらうと早く進むように見えます。しかし、自社が知らないところで決まったことが増えると、あとから全体の判断ができなくなります。連絡は自社の窓口に集め、窓口から各社に伝える形を基本にしておくと、情報の抜けが減ります。
窓口の担当者に求められるのは、広告の専門知識よりも、決まったことを記録し、関係する会社に漏れなく伝える役割です。すべての判断を1人で抱える必要はなく、決める人に話をつなぐことも窓口の仕事です。
連絡の量を減らすには、共有の場を決めておくのが効果的です。たとえば月に一度、関係する会社がそろう打ち合わせを短く設け、各社の結果、翌月の予定、ページや計測の変更予定を同じ場で確かめます。個別の打ち合わせだけでは、会社をまたぐ問題が見えにくいためです。
交通整理を始める手順
すでに複数の依頼先がいる場合も、これから増やす場合も、次の順で整えていくと進めやすくなります。
- 関係する会社と担当範囲を書き出す: 媒体、ページ、計測、制作物など、誰が何を持っているかを一覧にする
- 決める範囲を決める: 自社が決めること、各社が決めることを分けて、各社に伝える
- 正とする数字を1つ決める: 成果の定義と集計の期間もそろえる
- 計測の管理者を決める: 変更するときの連絡の流れも決めておく
- 自社の窓口を決める: 連絡を集める人と、判断を決める人を明らかにする
- 共有の場を決める: 全社がそろう打ち合わせの頻度と、話す項目を決める
契約の内容によっては、他社との情報共有に制限がある場合もあります。共有したい情報の範囲は、各社の契約や秘密保持の取り決めと照らし合わせて確かめてください。
FIG.交通整理を始める手順
- 担当範囲を書き出す誰が何を持っているかを一覧に
- 決める範囲を決める自社が決めること、各社が決めること
- 正とする数字を1つ決める成果の定義と集計の期間もそろえる
- 計測の管理者を決める変更するときの連絡の流れも
- 自社の窓口を決める連絡を集める人と判断を決める人
- 共有の場を決める全社がそろう打ち合わせの頻度と項目
まとめ
複数の代理店や制作会社に仕事を分けて頼むと、それぞれの得意を活かせる一方で、会社どうしの間に判断と情報の抜けが生まれやすくなります。作業の分担に加えて「誰が何を決めるか」を決め、全体の成果は1つの正とする数字で見て、連絡は自社の窓口に集めること。この3つを整えておくと、依頼先が増えても全体の状態をつかみやすくなります。依頼先の数を増やす前に、まずは今の体制を一覧に書き出すところから始めてみてください。
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