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クリエイティブの本数はなぜ成果に効くのか|AI時代の検証の考え方

広告のクリエイティブの本数が成果に関わる理由を、発注する側の担当者向けに整理しました。当たりを引く確率の考え方、本数を増やしても成果が出ない理由、検証の設計、AIで本数が増えたときの確認と審査の負荷までまとめています。

No.502026.10.09 公開読了目安 5分8A GARAGE 編集部

広告の提案を受けると、「クリエイティブ(広告の画像・動画・文章などの表現)の本数を増やしましょう」という話がよく出ます。生成AIやAIエージェントが広まり、案を作る手間が下がったことで、この傾向はさらに強まっています。

一方で、発注する側からすると「たくさん作れば良いというものではないのでは」「1本をしっかり作るほうが大事では」という疑問も自然です。どちらにも一理があり、大切なのは本数そのものではなく、本数を何のために使うかです。

この記事では、クリエイティブの本数が成果に関わる理由と、本数を増やすときに一緒に考えるべき検証の設計、そしてAIで本数が増えたときに増える負荷について、発注する側の担当者の目線で整理します。

本数が成果に関わるのは、当たりを事前に見分けられないから

広告の表現は、出してみるまでどれが響くか分かりません。社内で評判の良かった案が数字では伸びず、期待していなかった案が良い結果を出すことは珍しくありません。見る人の状況や配信される場所によって、受け取られ方が変わるからです。

そこで、1本に賭けるより、複数の案を出して結果で選ぶほうが、良い表現に出会える確率は上がります。仮の計算で考えてみます。

例:1本の案が「当たり」になる確率を仮に1割とすると、3本出したときに当たりが1本以上含まれる確率はおよそ27%、10本ではおよそ65%になります。数字は説明のための架空の例ですが、本数が増えるほど当たりを引ける可能性が上がる、という関係は分かると思います。

ただし、この計算には前提があります。それぞれの案が十分に違っていること、そして結果を正しく比べられることです。この前提が崩れると、本数を増やしても成果にはつながりません。

本数を増やしても成果が出ない3つのパターン

本数を増やしたのに成果が変わらないときは、次のどれかに当てはまっていることが多くあります。

似た案ばかりが並んでいる

色や言い回しを少し変えただけの案をいくら増やしても、見る人にとっては同じ広告です。先ほどの計算でいえば、10本出しても実質的には1本か2本しか試していないことになります。本数を数えるときは、伝えている中身や切り口がどれだけ違うかを見る必要があります。

予算が分散して、どれも判断できない

予算に対して本数が多すぎると、1本あたりの表示やクリックが少なくなり、良し悪しを判断できるだけの結果が集まりません。例:仮に月30万円の予算を30本に均等に分ければ1本あたり1万円で、商材によっては成果が数件しか出ない、または1件も出ない状態になります。これでは偶然の差と本当の差を見分けられません。

何を比べるかが決まっていない

「どれが良かったか」を何の数字で決めるかが決まっていないと、クリックの多い案と成果の多い案が違ったときに判断がぶれます。比べる数字と期間を先に決めておかないと、本数が多いほど結論が出にくくなります。

1本の質より、検証の設計が成果を左右する

本数を活かすには、1本1本の作り込みよりも、どう比べてどう残すかの設計が大切です。進め方の一例を手順にまとめます。

  1. 今回の検証で確かめたいことを1つに決める(例:どの切り口が響くか)
  2. 変える要素を決め、それ以外はできるだけそろえる
  3. 予算から、同時に試せる本数の上限を決める
  4. 比べる数字と、判断するまでの期間を先に決める
  5. 結果を見て、残す案と止める案を決める
  6. 何が響き、何が響かなかったかを記録し、次の案に活かす

この中で見落とされやすいのが、最後の記録です。結果を残しておかないと、同じ失敗を繰り返したり、以前に響いた理由が分からなくなったりします。本数が増えるほど、記録の仕組みの差が成果の差になって表れます。

FIG.本数を活かす検証の進め方

  1. 確かめたいことを1つに決める例:どの切り口が響くか
  2. 変える要素を決めるそれ以外はできるだけそろえる
  3. 同時に試せる本数の上限を決める予算から
  4. 比べる数字と期間を決める
  5. 残す案と止める案を決める
  6. 結果を記録する次の案に活かす
比べ方と記録の仕組みを先に決めてから、案を出します。

AIで本数が増えると、確認と審査の負荷も増える

AIを使えば、案を出す手間は大きく下がります。ただし、手間が下がるのは主に作る部分で、出す前の確認の手間はむしろ本数に比例して増えます。本数を増やす前に、次のような負荷を見込んでおく必要があります。

増える負荷中身考えておくこと
事実の確認価格や条件、商品の説明に誤りがないか誰が、どの資料と照らして確かめるか
表現と法令の確認誇大な表現や、法令に触れる言い回しがないか迷う表現の判断役を決めておく
権利の確認画像や文章が他者の権利を侵していないか使ってよい素材の範囲を決めておく
媒体の審査出稿のたびに媒体の審査を通す必要がある審査で止まったときの対応を決めておく
ブランドとの整合自社らしくない表現が混ざっていないか守ってほしい表現のルールを渡す

審査の基準や流れは媒体ごとに異なり、変わることもあるため、執筆時点の情報ではなく公式のヘルプで確認してください。法令に関わる表現の最終判断は、専門家や媒体の審査基準の確認をおすすめします。

確認が追いつかないまま本数だけを増やすと、誤った表現が出てしまったり、審査で止まる案が増えて配信が遅れたりします。本数は、確認できる量に合わせて決めるのが現実的です。

発注する側が確かめておきたいこと

代理店から「本数を増やしましょう」と提案されたときは、次の点を聞いておくと、提案の中身を判断しやすくなります。

  • それぞれの案は、何が違うのか。切り口の違いなのか、細部の違いなのか
  • 今の予算で、同時に何本までなら判断できるだけの結果が集まるのか
  • どの数字で、どのくらいの期間を見て良し悪しを決めるのか
  • 出す前の確認は、誰が何を見ているのか
  • 結果はどこに記録され、発注側も見られるのか

これらに具体的な答えがあれば、本数は成果に向けた手段として使われていると考えられます。答えが曖昧なら、本数を増やす前に検証の進め方をすり合わせるのがよいでしょう。

まとめ

クリエイティブの本数が成果に関わるのは、どの表現が響くかを事前に見分けられないからです。複数の案を出して結果で選べば、良い表現に出会える確率は上がります。

ただし、似た案ばかりだったり、予算が分散しすぎたり、比べる数字が決まっていなかったりすると、本数は成果につながりません。大切なのは、確かめたいことを決め、比べ方と記録の仕組みを整えることです。

AIで案を作る手間は下がっても、事実・表現・権利・審査・ブランドの確認は本数に比例して増えます。本数は、確認できる量と予算に合わせて決める。この考え方を持っておくと、代理店の提案も判断しやすくなります。

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