広告代理店を切り替えるときのチェックリスト|引き継ぎと空白期間の防ぎ方
広告運用の依頼先を替えるときに確かめたいことを、発注する側の担当者向けに整理しました。引き継ぐものの一覧、配信を止めずに移る段取り、自動入札の学習がやり直しになる点への備え、切り替え後の最初の数週間の見方をまとめています。
広告運用を任せている依頼先を替えたい、と考える理由はさまざまです。成果が伸び悩んでいる、担当者との連絡がうまくいかない、事業の方針が変わって別の得意分野を持つ会社に頼みたい、といった事情があります。
どの理由でも新しい依頼先を選ぶところに目が向きがちですが、切り替えで成果を落とさないためには「移り方」も大切です。引き継ぎに漏れがあると、新しい依頼先はそれまでの経緯が分からないまま一から始めることになります。配信が止まる期間ができれば、その間の問い合わせや売上を逃します。この記事では、切り替えのときに発注する側が確かめておきたい点を、チェックリストの形で整理します。
切り替えで起きやすい3つの失敗
最初に、切り替えのときに起きやすい失敗を確認しておきます。
- 引き継ぎの漏れ:広告アカウントは受け取れたが、計測の設定や過去の検証の記録が手元に残っていない。新しい依頼先が、すでに試して効かなかったことを、もう一度試すことになります。
- 空白期間:前の契約が終わってから新しい契約が始まるまでに間があき、広告が止まってしまう。需要のある時期に重なると、取り逃しが大きくなります。
- 学習のやり直しを見込んでいない:切り替え直後に成果が一時的に揺れたのを見て、新しい依頼先の力不足だと早合点してしまう。
3つめは見落とされがちです。広告の媒体には、成果のデータをもとに入札や配信先を自動で調整する仕組みがあります。アカウントや広告の作り直しをすると、この仕組みが改めてデータを集め直す期間に入ることがあり、その間は成果が安定しにくくなります。詳しくは後の章で触れます。
引き継ぐもののチェックリスト
前の依頼先から受け取るもの、自社で確かめておくものを一覧にしました。広告アカウントの名義や契約の解約条件については別の記事で詳しく扱っていますので、ここでは切り替えの場面で必要になるものを中心に並べています。
| 項目 | 中身の例 | 確かめること |
|---|---|---|
| 広告アカウント | 各媒体の広告アカウント | 自社に管理者の権限があるか、新しい依頼先に権限を渡せるか |
| 計測の設定 | 成果を数えるタグ、アクセス解析の設定 | 誰のアカウントで設定されているか、切り替え後も動き続けるか |
| 配信の記録 | 期間ごとの費用、表示、クリック、成果 | 契約が終わった後も見られるか、書き出して受け取れるか |
| 変更の履歴 | いつ、何を、なぜ変えたかの記録 | 管理画面の履歴だけでなく、理由を書いた記録があるか |
| 検証の結果 | 試した広告文や画像、効いたもの・効かなかったもの | 結論と、その判断に使った期間や数字が分かるか |
| 広告の素材 | 画像、動画、広告文の元のデータ | 受け取れるか、切り替え後も使ってよいか |
| 除外の設定 | 出さないようにしている検索語句や配信先 | 一覧として残っているか |
この中で特に価値が高いのは、変更の履歴と検証の結果です。数字そのものはアカウントに残っていても、「なぜそうしたのか」は記録がなければ分かりません。新しい依頼先にとって、過去の判断の理由は、同じ失敗を繰り返さないための材料になります。
受け取れるものの範囲は、前の契約の内容によって変わります。切り替えを決めたら、まず契約書で成果物の扱いを確かめ、受け取りたいものを一覧にして早めに依頼しておくと、終わり際の慌ただしさを避けられます。
空白期間を作らない段取り
配信を止めずに移るには、前の契約の終わりと新しい契約の始まりを、少し重ねるくらいの気持ちで段取りを組みます。次の順番で進めると、抜けが少なくなります。
- 前の契約の解約の申し出の期限と、最終日を確かめる。
- 新しい依頼先と、運用を始める日と最初の数か月の進め方を決める。
- 前の依頼先に、引き継ぐものの一覧を渡し、受け取る日を決める。
- 新しい依頼先に、広告アカウントと計測の設定の閲覧権限を先に渡し、中身を見てもらう。
- 前の契約の最終日までに、運用の権限を新しい依頼先へ移す日を決める。
- 権限を移した後、前の依頼先の権限を外す。
4番目の「先に見てもらう」が大切です。新しい依頼先が事前にアカウントを確認できれば、引き継ぎで足りないものに早く気づけますし、運用を始める日から手を動かせます。
また、切り替えの時期も考えておきたい点です。季節によって需要が大きく変わる商材なら、需要の山の直前や最中に切り替えるのは避け、比較的落ち着いた時期に移るほうが、影響を小さくできます。
FIG.空白期間を作らない段取り
- 最終日を確かめる解約の申し出の期限と最終日
- 始める日を決める新しい依頼先と最初の数か月の進め方
- 引き継ぐものを依頼する一覧を渡し、受け取る日を決める
- 先に中身を見てもらうアカウントと計測の閲覧権限を渡す
- 運用の権限を移す前の契約の最終日までに
- 前の権限を外す
学習のやり直しにどう備えるか
媒体の自動入札(成果のデータをもとに入札額を自動で調整する仕組み)は、データがたまるほど判断が安定します。切り替えの際に、キャンペーンを作り直したり、成果を数える地点を変えたりすると、それまでにたまったデータを活かしにくくなり、学習期間と呼ばれる不安定な時期に入ることがあります。どの操作で学習がやり直しになるかは媒体ごとに違い、仕様も変わるため、執筆時点の公式ヘルプで確かめてください。
発注する側としては、次の2点を新しい依頼先と話しておくと安心です。
- 既存の構成をすぐに作り直すのか、しばらく引き継ぐのか:作り直す必要があっても、一度にすべてを変えるより、段階を分けたほうが成果の揺れを見極めやすくなります。
- 成果を数える地点を変えるかどうか:変えると、切り替え前と後の数字が比べにくくなります。変える場合は、いつから変えたかを記録に残します。
仮に、切り替えた月の獲得単価が前の月より上がったとしても、それだけで判断を急がないことです。作り直しの範囲と時期を記録しておけば、揺れの理由を後から説明できます。
切り替え後の最初の数週間で見ること
切り替え後しばらくは、成果の数字だけで新しい依頼先を評価するのは早すぎます。最初の数週間は、次の点を見ると、今後の運用を任せられるかの手がかりになります。
- 計測が正しく動いているかを最初に確かめ、その結果を報告してくれたか。
- 引き継いだ記録を読んだうえで、何を続け、何を変えるかの方針を示してくれたか。
- 変えたことと、その理由が、レポートや連絡に書かれているか。
- いつ、どの数字で次の判断をするかの目安を共有してくれたか。
成果の数字は、学習が落ち着き、方針に沿った改善が一回りしたところで評価します。その時期を切り替えの前に新しい依頼先と決めておくと、社内への説明もしやすくなります。
まとめ
広告代理店の切り替えでは、新しい依頼先を選ぶことと同じくらい、移り方が成果を左右します。広告アカウントと計測の設定に加えて、変更の履歴と検証の結果を受け取ること、前後の契約を少し重ねて配信を止めないこと、作り直しによる学習のやり直しを見込んでおくことが要点です。
切り替え後の最初の数週間は、成果の数字よりも、計測の確認や方針の示し方を見て判断します。引き継ぎの一覧と段取りを先に作っておけば、切り替えは成果を落とす出来事ではなく、運用を見直すよい機会になります。
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