1人で担うマーケティングとAIエージェント|任せる順番とやらないこと
マーケティングを1人で、しかも他の仕事と兼ねて担っている担当者に向けて、AIエージェントで変わること・変わらないことを整理しました。任せる作業の順番、やらないことの決め方、上司や代行会社と合意しておくことをまとめています。
地域の事業会社では、広告やホームページ、SNS、販促物の手配までを1人の担当者が受け持っていることが珍しくありません。しかもその担当者は、総務や営業、店舗の運営などの仕事と兼ねていることが多く、マーケティングに使える時間は1日のうちのわずかです。
そこにAIエージェント(指示を受けて、調べる・下書きする・整理するといった複数の作業を続けてこなすAIの仕組み)が加わると、何が変わるのでしょうか。期待される一方で、「新しい道具を覚える時間がない」「使ってみたが仕事が増えただけだった」という戸惑いも起こりがちです。
この記事では、1人で兼務している担当者を前提に、AIエージェントで変わること・変わらないこと、任せる順番、そして先に決めておきたい「やらないこと」を整理します。
兼務の担当者が抱えている仕事の現実
まず、1人で担うマーケティングの仕事を書き出してみます。多くの場合、次のような作業が細切れに入ってきます。
- 広告やSNSに載せる文章と画像の用意
- ホームページのお知らせや商品情報の更新
- 広告の数字やアクセスの数字の集計と、上司への報告
- 代行会社や制作会社とのやり取り、見積もりの確認
- 問い合わせへの返信や、営業・店舗からの依頼への対応
このうち、本当に担当者にしかできないのは「何をやるかを決めること」と「社内外の人と調整すること」です。ところが実際の時間は、文章を書く、数字を表にまとめる、資料を探すといった作業に多く取られています。決める仕事に時間を回せないまま、目の前の作業に追われている状態が、兼務の担当者のよくある姿です。
AIエージェントで変わること、変わらないこと
AIエージェントが得意なのは、材料がそろっている作業を速くこなすことです。たとえば、商品の資料をもとに広告文の案をいくつも出す、数字の表から先月との違いを文章にまとめる、長い資料の要点を抜き出す、といった作業です。1人の担当者にとっては、手を動かす時間が短くなり、案を比べる余裕が生まれるという変化があります。
一方で、変わらないこともはっきりしています。
- 何を目指すかを決めること:問い合わせを増やすのか、来店を増やすのかは、会社の方針から担当者が決めます。
- 出てきたものが正しいかを確かめること:価格や条件、日付などの事実は、元の資料と照らす必要があります。
- 社内外の人と合意すること:上司の承認や、代行会社との役割分担は人どうしの仕事です。
つまり、1人の担当者にとってのAIエージェントは「もう1人の担当者」ではなく、「下書きと整理を引き受ける手伝い役」と考えるのが現実的です。確認する人が1人しかいない以上、任せる量を増やしすぎると、確認が追いつかなくなります。
任せる作業の順番を決める
兼務の担当者が一度に多くの作業を任せようとすると、使い方を覚える時間と確認の時間が重なり、かえって忙しくなります。間違いに気づきやすく、直しやすい作業から順に広げていくのが無理のない進め方です。
| 順番 | 任せる作業の例 | この順番にする理由 | 人が確かめる点 |
|---|---|---|---|
| 1 | 資料の要約、会議メモの整理 | 社内で使うだけで、間違いの影響が小さい | 要点の抜け漏れ |
| 2 | 数字の集計と報告の下書き | 毎月繰り返すので、時間の短縮が積み重なる | 元の数字との一致 |
| 3 | 広告文やSNS投稿の案出し | 案を多く出せると、比べる余裕が生まれる | 事実、表現、自社らしさ |
| 4 | お客様への返信文の下書き | 社外に出るため、慣れてから扱う | 内容の正確さと言葉遣い |
大切なのは、1つの段階に慣れてから次に進むことです。たとえば仮に、毎月の報告の下書きを任せて数か月続け、確認の手間が読めるようになってから広告文の案出しに広げる、という進め方です。どの作業にどれだけ確認の時間がかかったかを簡単に記録しておくと、次に広げるかどうかを判断しやすくなります。
FIG.任せる作業の順番
- 資料の要約、会議メモの整理社内で使うだけで、間違いの影響が小さい
- 数字の集計と報告の下書き毎月繰り返すので、時間の短縮が積み重なる
- 広告文やSNS投稿の案出し案を多く出せると、比べる余裕が生まれる
- お客様への返信文の下書き社外に出るため、慣れてから扱う
やらないことを先に決める
1人の担当者にとって、AIエージェントで生まれた時間をどう使うかは大きな分かれ目です。作業が速くなった分だけ新しい施策を足していくと、確認する量が増え続け、結局は時間が足りなくなります。そこで、始める前に「やらないこと」を決めておくことをおすすめします。
- 確認できない量は出さない:案を多く作れても、目を通せる本数までに絞ります。
- 社外に出すものを確認なしで使わない:広告、ホームページ、お客様への返信は、人が読んでから出します。
- 入力してはいけない情報を入れない:お客様の個人情報や取引先との約束で外に出せない情報は、社内のルールに沿って扱います。
- 媒体や施策を一度に増やさない:時間が空いたからといって、運用する媒体を増やすのは慎重にします。
やらないことを決めると、空いた時間を「決める仕事」に回しやすくなります。何を目指すか、どの施策を続けてどれをやめるかを考える時間こそ、1人の担当者にとって最も足りていない時間です。
上司や代行会社と合意しておくこと
1人の担当者がAIエージェントを使い始めるときは、周りの人との合意も欠かせません。担当者だけで判断すると、問題が起きたときに1人で抱え込むことになるからです。
上司とは、どの作業にAIエージェントを使うか、社外に出すものを誰が最終確認するか、使うサービスの利用規約や費用を誰が承認するかを決めておきます。担当者が不在のときに誰が代わりに確認するかも、あわせて決めておくと安心です。
代行会社に広告運用を任せている場合は、自社でAIエージェントを使う範囲と、代行会社が受け持つ範囲を分けておきます。たとえば、広告文の案を自社で出して代行会社に渡すなら、表現や審査の確認をどちらが行うのかを決めておかないと、確認が抜けたり二重になったりします。代行会社がAIを使っているかどうか、使っているなら誰が確認しているかも、この機会に聞いておきます。
なお、AIのサービスの機能や利用規約、料金は変わりやすいものです。執筆時点の情報で決めたことも、定期的に公式情報で確かめ直す前提にしておきます。
まとめ
1人で兼務しているマーケティング担当者にとって、AIエージェントは下書きや整理を引き受け、手を動かす時間を短くしてくれる手伝い役です。一方で、何を目指すかを決めること、出てきたものを確かめること、社内外と合意することは、これまでどおり担当者の仕事として残ります。
任せる作業は、社内で使う要約や集計など間違いに気づきやすいものから始め、慣れてから社外に出るものへ広げます。あわせて、確認できない量は出さない、確認なしで社外に出さないといった「やらないこと」を先に決め、空いた時間を決める仕事に回すことが大切です。上司や代行会社とは、確認の担当と範囲を始める前に合意しておきましょう。
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