広告アカウントは誰のものか|代行を頼む前に決めておく所有と権限
広告運用を代行に頼む前に決めておきたい、広告アカウントの名義と権限の考え方を整理しました。自社名義で持つ意味、代理店名義になる場合の注意点、権限の渡し方の手順、解約したときに何が手元に残るかを、発注する側の担当者向けにまとめています。
広告運用を代行に頼むとき、料金や担当者の話に比べて、後回しにされやすいのが「広告アカウントを誰の名義で持つか」という点です。広告アカウントとは、広告の設定や配信の記録、支払いの情報がまとまっている、媒体ごとの管理の単位のことです。
始める時点では、名義がどちらでも配信の見た目は変わりません。違いが表に出るのは、依頼先を替えるとき、自社運用に切り替えるとき、契約を終えるときです。そのときになって「過去の記録が見られない」「作り直しになる」と気づいても、取り戻せないことがあります。
この記事では、代行を頼む前に決めておきたい、アカウントの所有と権限の考え方を整理します。細かな設定方法ではなく、依頼先と何を話し合い、何を記録しておくかという判断の材料に絞ります。
「所有」と「権限」は別の話
最初に分けて考えたいのが、所有と権限です。所有は、そのアカウントが誰の名義で、誰の判断で残したり閉じたりできるかという話です。権限は、誰がどこまで見られて、どこまで操作できるかという話です。
自社名義のアカウントに代理店を招き入れて運用してもらう形もあれば、代理店名義のアカウントを自社が閲覧だけさせてもらう形もあります。どちらも「管理画面は見られる」状態ですが、契約を終えたときの結果は大きく違います。
また、所有を確かめる対象は広告アカウントだけではありません。次の表のように、広告の成果に関わるものはいくつかに分かれています。
| 対象 | 中身の例 | 確認しておくこと |
|---|---|---|
| 広告アカウント | 配信の設定、過去の配信の記録 | 誰の名義で作るか、解約後も残るか |
| 支払いの情報 | 広告費の請求先、支払い方法 | 媒体から直接請求されるか、代理店経由か |
| 計測の仕組み | アクセス解析、成果を数えるタグ | 設定したアカウントの名義と権限 |
| SNSのページやアカウント | 広告の発信元になる自社のページ | 管理者に社内の人が入っているか |
| 広告の素材 | 画像、動画、広告文 | 元のデータを受け取れるか、使える範囲 |
自社名義で持つ意味
一般的には、広告アカウントは自社の名義で持つことが勧められます。理由は大きく3つあります。
1つ目は、記録が残ることです。どの広告にいくら使い、どれだけ成果が出たかという記録は、次の運用を考えるときの一番の材料になります。依頼先を替えても、新しい担当者が過去の記録を見ながら続きを考えられます。
2つ目は、配信の積み重ねを引き継げることです。自動入札(媒体が成果のデータをもとに入札額を自動で調整する仕組み)は、たまったデータを使って配信を調整します。アカウントを作り直すと、その積み重ねがいったん途切れ、最初から学び直す期間が必要になります。
3つ目は、広告費の実額を自分で確かめられることです。媒体に実際に支払った額を管理画面で見られれば、請求の中身について依頼先と同じ数字で話ができます。
代理店名義になる場合に確かめること
代理店名義のアカウントで運用する形にも、事情があることがあります。請求を代理店にまとめたい、立ち上げを急ぎたい、媒体によっては代理店を通した契約の形になる、といった場合です。名義が代理店だから問題だと決めつける必要はありません。
大切なのは、契約の前に「解約したとき、何が手元に残るのか」を具体的に聞いておくことです。たとえば、過去の配信の記録を書き出して受け取れるか、アカウントそのものを自社に移せるか、移せない場合は何を作り直すことになるか、といった点です。アカウントの移し替えができるかどうかは媒体や契約の形によって違い、仕様も変わるため、公式ヘルプや依頼先に確認してください。
答えは口頭で終わらせず、契約書や見積もりの備考など、文字で残る形にしておくと安心です。
権限の渡し方の手順
自社名義で持つ場合、代理店には必要な範囲の権限を渡して運用してもらいます。媒体ごとに権限の種類や名前は違い、執筆時点の仕様も変わることがあるため、細かな操作は公式ヘルプで確かめてください。流れとしては次のようになります。
- 広告アカウントを自社の名義で作る。登録に使うメールアドレスは、担当者個人ではなく会社として管理できるものにする。
- 社内で管理者を2人以上決める。担当者が1人だけだと、異動や退職で誰も入れなくなることがある。
- 代理店を招待し、運用に必要な権限を渡す。支払い情報の変更や、利用者の追加・削除まで任せるかは別に決める。
- 支払いの方法と請求先を決め、広告費の実額を社内で見られるようにする。
- 誰に、どのアカウントの、どの権限を渡したかを一覧にして残す。
- 契約を終えるときは、一覧をもとに代理店の権限を外し、社内の管理者が入れることを確かめる。
5番目の一覧は地味ですが、効き目が大きい作業です。広告アカウント、計測の仕組み、SNSのページと、権限を渡す場所が増えるほど、誰が何を持っているかは分からなくなります。
FIG.権限の渡し方の手順
- 自社の名義で作る会社として管理できるメールアドレスで
- 社内の管理者を2人以上決める
- 代理店を招待する運用に必要な権限を渡す
- 支払いの方法と請求先を決める
- 渡した権限を一覧にして残す
- 契約を終えるときは権限を外す
解約するときに困らないために
アカウントの名義は、始めるときより終えるときに重みが出ます。依頼先を替える場合、新しい依頼先への引き継ぎと、前の依頼先の権限の整理が同じ時期に重なります。このとき名義が自社にあれば、権限の付け替えだけで続きを始められます。
もう1つ見落としやすいのが、広告の素材です。画像や動画、広告文の元のデータを受け取れるか、契約後も使い続けてよいかは、契約の内容によって違います。素材の権利については、契約書で扱いを確かめ、判断に迷う場合は専門家に相談してください。
こうした点を最初の打ち合わせで確かめておけば、依頼先との関係も分かりやすくなります。任せる範囲と自社で持つ範囲が、はっきりするからです。
まとめ
広告アカウントの所有と権限は、始めるときには目立たず、終えるときや替えるときに大きな差になる項目です。代行を頼む前に、次の点を決めておくことをおすすめします。
- 所有と権限を分けて考え、広告アカウント、支払い、計測、SNSのページ、素材のそれぞれについて名義を確かめる
- できるだけ自社名義で持ち、記録と配信の積み重ねを手元に残す
- 代理店名義になる場合は、解約したときに何が残るかを文字で確かめる
- 社内に管理者を2人以上置き、渡した権限を一覧にして残す
名義と権限を先に整えておくと、依頼先を選ぶときも、将来の見直しのときも、落ち着いて判断できるようになります。
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