コーヒーには覚醒作用のあるカフェインが含まれているため、眠気を覚ましたり気分転換をしたりするのに飲んでいるという方も多いでしょう。
しかしコーヒーを飲みすぎるとカフェインの過剰摂取につながり、内臓に悪影響を与える可能性があるため注意が必要です。
内蔵の中でも体内の老廃物などを尿として排出する臓器といえば腎臓ですが、コーヒーは腎臓にどんな影響を与えるのでしょうか。
今回はコーヒーと腎臓の関係についてご紹介します。
コーヒー以外の腎臓に良いとされる飲み物や、腎臓に負担を与える食べ物についてもまとめましたので、参考にしてみてください。
腎臓にコーヒーは悪いの?
コーヒーが腎臓に悪いという明確な根拠はありませんが、コーヒーを飲みすぎると腎臓に悪影響を与える可能性があります。
特に腎機能が低下しているときは、コーヒーの飲み過ぎに注意が必要です。
ここでは腎臓の働きやコーヒーの成分、弱った腎臓にコーヒーがどのような影響を与えるのかについて説明します。
腎臓の働きとは
肝心要(肝臓・心臓・腎臓)という言葉に示される通り、体にとって非常に重要な役割をもつ臓器である腎臓には、次のような働きがあります。
〇血液中の老廃物など不要なものを尿として排出する
〇体調や気候に合わせて体の中の水分量を調節する
〇血圧を適正値に調整する
〇赤血球を増やすホルモンやカルシウム吸収を促すホルモンを作る
腎臓の機能が低下すると老廃物をうまく排出することができず、むくみやすくなる、疲れやすくなる、貧血になる、骨がもろくなるなどの不調が出ることがあります。
しかし腎臓は肝臓と同じように自覚症状が出にくい臓器であるため、定期的に健康診断を受けたり普段の生活習慣を見直したりすることが大切です。
コーヒーに含まれる成分
コーヒーの代表的な成分はカフェインとポリフェノールですが、腎臓と関係の深いカリウムや微量ですがリンも含まれています。
〇コーヒー100㎖あたりに含まれる成分量の目安
カフェイン | 約60㎎ |
ポリフェノール | 約200㎎ |
カリウム | 約50㎎ |
リン | 約7㎎ |
それぞれどんな成分なのか見ていきましょう。
カフェイン
カフェインとは天然由来の有機化合物アルカロイドの仲間で、コーヒー以外にも緑茶や紅茶、チョコレートなどに含まれている成分です。
主な働きとしては、覚醒作用や利尿作用、交感神経刺激、血管拡張作用などがあります。
疲労を抑制する働きや鎮痛作用もあるため、医薬品にも含まれている成分です。
また慢性腎臓病ではカフェインを摂取しているほうが死亡率が低いという興味深い研究報告が出ています。
ポリフェノール
コーヒーに含まれるクロロゲン酸はポリフェノールの一種で、コーヒーの香りや色、苦みの元になっている成分です。
ポリフェノールは抗酸化作用が強いことで知られていますが、脂肪蓄積を抑える作用があるとして注目されています。
カリウム
カリウムは人間の細胞内や動物性・植物性食品に含まれている電解質(ミネラル)です。
細胞外にあるナトリウムとともに浸透圧調整を行う、筋肉を収縮させる、むくみを防止するなどの働きがあります。
また腎臓でナトリウムが再吸収されるのを防ぎ、血圧を正常な値に保つ重要な成分です。
リン
リンはカリウム同様に体内に存在するミネラルのひとつです。
骨や歯を丈夫に保つ、神経や筋肉の働きを正常に保つなどの働きのほか、腎臓で血液中のリン酸濃度を一定に保つ働きがあります。
弱っている腎臓にコーヒーはNG?
腎臓が弱っているときはコーヒーの過剰摂取にならないように注意が必要です。
健康な腎臓はカリウムの大部分を尿として排出させます。
しかし腎不全などで機能が低下している腎臓はカリウムをうまく排出することができません。
コーヒーを過剰摂取するとカリウムの過剰摂取となり、血液中のカリウム濃度が高い状態、つまり高カリウム血症になりやすいのです。
高カリウム血症になると、力が入りにくくなる、しびれや吐き気を感じるなどの症状が出るほか、不整脈を引き起こすこともあります。
同様に、腎機能が低下していると体内の余分なリンを排出できません。
高リン血症が悪化すると血管の石灰化が進み、心不全などにつながる恐れがあります。
そのため弱っている腎臓にコーヒーなどのカリウム・リンを含む飲み物や食べ物の過剰摂取はよくないといわれているのです。
カフェインレスコーヒーや水出しコーヒーは?
カフェインレスコーヒーや水出しコーヒーは通常のコーヒーとどう違うのでしょうか。
カフェインレスコーヒーとはカフェイン含有量が少ないコーヒーのことです。
腎臓で水分の再吸収を抑え尿の排出を促すのはカフェインですから、カフェインレスコーヒーは比較的頻尿になりにくい飲み物といえるでしょう。
一方水出しコーヒーはカフェインが極端に少ないというわけではありません。
そのため通常のコーヒーを飲んだ時と大きな違いはないとされています。
カフェインレスコーヒーも水出しコーヒーも、適量を飲むぶんには腎臓に悪い影響はないといえるでしょう。
コーヒーと腎機能の関係
コーヒーは血液をさらさらにして心臓病を防ぐ、リラックス効果がある、脂肪燃焼を促し肥満を防止するなど、さまざまな健康効果が期待できる飲み物です。
またコーヒーを飲むことで腎臓病になりにくいという研究報告もあります。
コーヒーと腎機能の関係についてどんな研究報告があるのか見ていきましょう。
コーヒーを飲む人はeGFRの数値が高い?
腎機能が正常な日本人を対象にした研究では、コーヒーを1日に1杯以上飲む人は1杯未満の人に比べ、eGFRの数値が高いことがわかりました。
またオランダでの調査によると、コーヒーを飲む量が多いほどeGFRの数値が高いという結果が出ています。
同研究では、適量のコーヒーは健康な人の腎機能に悪い影響はないであろうと述べていました。
〇eGFRとは?
eGFRとは腎臓の働きを調べるための指標で、体内の老廃物を尿へと排出する処理能力がどれくらいあるかを示したものです。
慢性腎臓病の重症度はeGFRの数値により5段階に分けられており、数値が低いほど腎機能が低下していることになります。
コーヒーで腎臓病による死亡リスクが低下する?
腎臓病による死亡とコーヒーの関係についても興味深い研究報告が出ています。
アメリカで行われた18歳以上の慢性腎臓病患者(eGFRのステージ4まで)を対象にした研究によると、コーヒーを多く飲む人、つまりカフェインを多く摂取した人は死亡リスクが低下するそうです。
アメリカでの研究ですが、人種や民族に関係なくほぼ同じ結果が出ることも確認されています。
コーヒー以外で腎臓に良いオススメの飲み物
適量のコーヒーは健康な腎臓に悪い影響がないことや、コーヒーを飲むと腎臓病の死亡リスクが低下することなどがわかっています。
しかし、コーヒー以外の飲み物を選びたい方も少なくないでしょう。
コーヒー以外で腎臓に良いとされる主な飲み物と、飲み物100gあたりのカリウム・リンの含有量を以下にまとめました。
コーヒーによる腎臓への影響が気になる方は参考にしてみてください。
飲み物の種類 | カリウム | リン |
玄米茶 | 7㎎ | 1㎎ |
麦茶 | 6㎎ | 1㎎ |
紅茶 | 8㎎ | 2㎎ |
烏龍茶 | 13㎎ | 1㎎ |
ほうじ茶 | 24㎎ | 1㎎ |
煎茶 | 27㎎ | 2㎎ |
腎臓に負担を与える食べ物
飲み物だけでなく、腎機能が低下しているときは避けたほうがいい食べ物もあります。
ここでは食べ過ぎると腎臓に負担を与える可能性のある食べ物をまとめました。
ただし腎機能が正常であっても食べ過ぎは禁物です。
どんな食べ物でも適量を守って食べるとよいでしょう。
〇塩分の多い食べ物:漬物、汁物、ハムなどの加工食品
〇カリウムを多く含む食べ物:長いも、さつまいも、さといも、アボカド、かぼちゃ、ほうれん草など
〇リンを多く含む食べ物:いくら、たらこなどの魚卵、干物、貝類・甲殻類、乳製品、加工食品、アーモンド、チョコレートなど
腎臓を健康に保つ生活習慣
最後に腎臓を健康に保つ生活習慣について説明します。
美味しいコーヒーを楽しみながら健康な腎臓をキープするためにも、次のポイントを覚えておくとよいでしょう。
水分補給する
適度に水分を補給することで腎臓への負担を減らすことができます。
体内の水分量が減るといわゆる脱水の状態となり、腎臓の機能低下につながってしまうのです。
また水分補給とセットで覚えておきたいのは、トイレを我慢しないことです。
トイレを我慢すると尿が腎臓へと戻ってしまい、腎臓に損傷を与える可能性があります。
こまめに水分を補給し、尿意を感じたら必ずトイレに行くようにしましょう。
適度な運動をする
持病などで運動が禁止されている方でなければ、毎日適度な運動をするのも効果的です。
適度な運動とは、そのまま続けられそうな楽にできる運動をいいます。
ウォーキングや踏み台昇降運動など、体力や体調に合わせて行うのがおすすめです。
十分な睡眠をとる
腎臓機能を正常に保つには十分な睡眠が必要です。
ある研究によると、睡眠時間が少ないと腎機能が低下することがわかっています。
最低でも7~8時間はしっかり眠るように心がけるとよいでしょう。
まとめ
この記事ではコーヒーと腎臓の関係についてご紹介しました。
コーヒーにはさまざまな健康効果があることが知られており、適量のコーヒーは腎臓にも良い影響を与えることがわかっています。
ただし腎機能が低下している方はカリウムやリンの過剰摂取になる可能性があるため注意が必要です。
健康な腎臓を保ち美味しいコーヒーを楽しむためにも、まず生活習慣を見直してみてはいかがでしょうか。