キャンプでご飯を炊くといえば、すぐにメスティンでの炊飯が思い浮かびます。
しかし、持っていく荷物をできるだけ少なくしたいバックパックキャンパーには「シェラカップ炊飯」もおすすめです。
特に0.5合といった1人用にちょうどいい量が炊け、そのまま器として食べられるシェラカップ炊飯は、ソロキャンプにピッタリ。
そこでこの記事では、0.5合のお米を上手に炊くシェラカップ炊飯のコツについて、実証結果とともにご紹介します。
ソロキャンプでも気軽に炊きたてのご飯が食べられるシェラカップ炊飯。
どうか最後までお付き合いください。
シェラカップ炊飯で準備するもの
まず、シェラカップ炊飯を行う際に準備するものは、次のとおりです。
・シェラカップ
・バーナー
・蓋になるもの
・タオル
・手袋
・スプーン
・お米と水
シェラカップ
0.5合のお米を炊く場合、最低でも300ml程度の容量があるシェラカップが必要となります(400〜450ml程度のサイズがあると吹きこぼれ防止にもなります)。
また、素材的には【アルミニウム>ステンレス>チタン】の順に熱伝導率が高くなるため、炊飯に使用するには熱のまわりが均一にならないチタンは避けるべきです。
とはいえアルミ製のシェラカップは種類が豊富にはないため、一般的なステンレス製シェラカップを利用するのが良いでしょう。
※今回の検証では300ml容量のシェラカップを利用しています。
バーナー
バーナーはガス、ガソリンの燃料の別は問わず、どのような形状でも構いませんが、炊飯の際に結構吹きこぼれがありますので、掃除のしやすい機種を選ぶのをおすすめします。
アウトドアの使用では、小型のウインドスクリーンがあると熱が安定してシェラカップにあたるため、あると便利な一品です。
また、「アルコールバーナー」や「固形燃料」では、炊けなくはないものの途中の火力調整がしづらいためあまりおすすめしません。
※固形燃料は15分燃焼のモノを利用すればちゃんと炊くことはできますが、固形燃料を利用した『自動炊飯』では、焦げ付きなどを避けることは難しいと思います。
蓋になるもの
じっくりとお米の芯まで炊きあがるように、炊飯時には蓋が必要です。
専用の蓋、アルミホイル、同じサイズのシェラカップを貝合わせにするなど、どんなモノでも構いません。
タオル
炊き上がったご飯をつつみ、「蒸らす」時に使用します。
手袋
バーナーの直火にかけたシェラカップは、取っ手まで熱くなることがありますので、念のため手袋をして作業するようにします。
特に吹き出る蒸気でやけどをする危険もありますので、注意してください。
スプーン
お湯が沸騰するまでは、適宜かき混ぜたほうが焦げ付き防止になります。
そのために木製などの熱で溶けないスプーン(なければ箸でも良い)を用意すると良いでしょう。
お米と水
今回の検証実験では、お米は便利な無洗米を使用しました。
0.5合炊飯の場合、お米は乾燥状態で約90ml、水が約110ml(お米の約1.2倍)必要です。
検証1:吸水させずに炊いてみる
では、実際にシェラカップ炊飯を実践してみましょう。
まずは無洗米を使用して、水を入れてからすぐに炊く『吸水なし』のスタイルで実験してみます。
無洗米に吸水なしでも、自宅で炊飯器を使って炊く場合なら、少々硬いながらもほぼ問題なく炊くことができますが、さて、シェラカップ炊飯の時はどうでしょう。
シェラカップの目盛りに従って、お米を90ml用意します。
今回は100mlの目盛りより少し下ぐらいまでというアバウトな計量方法を取りましたが、正確に計りたい方や手間を省きたい方は、自宅であらかじめ計量して袋に小分けして持ってくるのも良いかもしれません。
次に水を110ml注ぎます。
このシェラカップは200mlの目盛りがついているので、ちょうど200mlのところまで入れればOKです。
無洗米を利用しているため、ほんの少しだけ多めを意識してみました。
バーナーに火を点け、最初は強火で沸騰を待ちます。
お湯が沸くまでは強火状態で蓋をせず、スプーンで底の方から適宜かき混ぜるようにすると焦げ付き防止に。
このあたりが炊飯器やメスティンと大きく違う、シェラカップ炊飯のコツです。
お湯が湧いたらかき混ぜるのは終了。
蓋をかぶせます。
画像バーナーの炎はできるだけ『とろ火』にしてください。
しばらくすると蓋の間から『フツフツ』と吹きこぼれが始まります。
300mlぐらいのシェラカップだと、かなりの量の吹きこぼれがありますので、それが嫌な方は400ml以上の大きいシェラカップを利用してください。
また、噴き出す水蒸気で蒸気やけどをしやすいので注意が必要です。
次第に噴き出す蒸気が消えていきます(とろ火にしてから大体10分強)。
『パチパチ』という音が聞こえ始め、香ばしい匂いがしてきたら炊きあがりの合図。
火を止め、蓋ごとタオルでくるみ、約10〜15分ほど(今回は15分)の『蒸らし』を行います。
炊きあがり
カップ全体にお米が膨れ上がり、見た目はいい感じに炊けました。
ただし、若干焦げ臭がするのと、縁の部分が何となく茶色くなっているのが嫌な予感をかきたてます。
混ぜてみると案の定焦げ付いていました。
これではちょっと『おこげ』の域を超えていますね。
『パチパチ』という音がし始めてから、加熱をしすぎたのが原因でしょうか。
しかし、ここまで加熱したというのに、食べてみるとかなり芯が残っていて食味は最低。
やはり吸水しないで炊くのは、シェラカップ炊飯の場合はやめたほうが良さそうです。
使い終わったシェラカップも、この通り焦げつきだらけです。
こうなってしまっては金タワシでゴシゴシこすっても、容易には落ちませんね(事実落ちませんでした)。
検証1の結論としては、『シェラカップ炊飯では必ず吸水を行なう』というコツがわかりました。
検証2:吸水させて炊いてみる
それでは、次はちゃんと吸水させて炊いてみましょう。
なお、吸水時間を取る以外の炊き方は、すべて検証1と同等の条件下で行っています。
まずはお米90mlと水110mlをシェラカップに。
実験が冬場であったため、約60分の吸水を行いました。
ちなみに季節による吸水時間の目安は、おおよそ次のとおりです。
・冬:60~90分程度
・春/秋:45分程度
お米の吸水スピードは、水温が高ければ早くなる理屈ですので、夏場でもクーラーボックスで冷やした水を使うような場合は、少し長めに吸水時間を取ると良いでしょう。
また、お米が水を吸いきると飽和状態になります(約2時間程度)ので、吸水時間が長いほど柔らかくふっくらと炊けるというわけではありません。
特に夏場などは常温状態であまり長い間吸水させていると、雑菌が繁殖してしまう場合もありますので注意が必要です。
炊きあがり
検証1と同等の条件(火加減、時間)で炊いてみたところ、かなりいい感じに炊きあがりました。
若干硬い感じのご飯ではありますが、気になるほどの芯も残っておらず、アウトドアで炊いたご飯として考えたら上出来な炊きあがりではないでしょうか。
ただ、『パチパチ』音の後の加熱時間がこれでも長かったためか、焦げ付きは残ってしまいました(画像のシェラカップは検証1で使ったものをそのまま検証2でも使用。焦げの範囲が広がっているのが見て取れる)。
検証2では、『しっかりと吸水時間を取ればおいしく炊けるという』という結果に。
ただし、シェラカップ貝合わせの蓋では吹きこぼれが多いのか、焦げつきが気になる程度までの加熱を行っても、かなり硬めのご飯になっていたのは気になります。
私は硬めのご飯のほうが好きですが、柔らかめが好きな方にはもう少し工夫が必要ですね。
検証3:専用蓋とバーナーパットを使用する
次に検証3として、よりおいしいご飯を炊くために、専用の蓋とバーナーパットを用意してみました。
バーナーの上に火の通りを均一にする、バーナーパットを敷いて加熱。
お米と水の量、吸水時間などは検証2とまったく同じ条件下での実験です。
火加減も同じ程度の強火ですが、バーナーパットの効果でより炎が広がっているのがわかります。
沸騰するまではお米を混ぜるのも同様に行いました。
お湯が湧いたらとろ火にして、シェラカップ専用の蓋(シェラカップリッド)を乗せます。
今回用意した蓋は薄いステンレス製で、重量もかなり軽量のモノです。
本来ご飯を炊く時の蓋は、重いほうが好ましいため、空いたシェラカップに水を入れて、重し代わりに乗せてみました。
アウトドアでは適当な石などを置いてもいいですね。
シェラカップがギリギリのサイズのため、専用の蓋でスキマをふさいでもそれなりの吹きこぼれはありますが、それでも検証1、2のシェラカップ貝合わせの時と比べると、はるかに吹きこぼれの量は少ないようです。
今度は『パチパチ』という音が聞こえ、香ばしい匂いがし始めたらすぐに火を止めます。
それからバーナーからおろしてタオルでくるむのですが、専用蓋を使っているとずれる心配もなく、きれいに包むことができました。
炊きあがり
15分の『蒸らし』を終え蓋を取ってみると、心なし検証2の時よりも『ツヤ感』が違う気がします。
端から混ぜてみても、焦げ付きは見当たらず、いい感じの『おこげ』があるだけで、炊きあがりに問題はまったくなさそうです。
食べてみると、味わいも二重丸。
芯がなく硬すぎもしない、かなりクオリティの高い炊きあがりです。
食べ終わった後のシェラカップにも、焦げ付きはほとんど見当たりません。
スポンジで洗うだけで、十分きれいになりました。
(左:検証3終了後のシェラカップ、右:金タワシで必死にこすった検証2終了後のシェラカップ)
検証3の結果としては、『専用蓋とバーナーパットは最強』ということがわかりました。
シェラカップ炊飯時に用意しておくと良いもの
検証の結果から、シェラカップ炊飯を行なう際には火加減や時間も大切ですが、用意すると良いものがあるということがわかりました。
それが、「専用蓋」と「バーナーパット」です。
ここでは、その2つについて解説します。
専用フタ
家庭の炊飯器や炊飯専用釜などをみるとわかるように、ご飯を炊く時には『立ち上がる蒸気は逃し、吹きこぼれないよう、できるだけ内部に圧力をかけた』状態にすることが大切です。
これは、飽和状態になる蒸気は放出してあげて、旨味の詰まった成分は逃さないという考え方によります。
また、内部に圧力がかかった状態で炊いたほうが、芯の残らないご飯が炊けます。
これは、圧力釜をイメージしてもらうとわかりやすいかもしれませんね。
吹きこぼれを完全になくすためには大きめのシェラカップを使うしか手はありませんが、内部に適度な圧力をかけるためには、できるだけピッタリとシェラカップに蓋をしてあげればよいわけです。
検証1と2では貝合わせのシェラカップで蓋をしました。
また、アルミホイルで蓋をするやり方もありますが、どちらのやり方でも『圧力をかける』というにはやや物足りません。
そこで、よりおいしいご飯を炊こうと思ったら、専用の蓋が必要となります。
専用の蓋をかぶせて適度の重しを置いてやれば、旨味を逃さずよりふっくらとしたご飯を炊くことができるのです。
キャプテンスタッグ シェラカップリッド ステンレス
キャプテンスタッグの320ml、630mlのシェラカップ両方に使用可能な専用蓋です。
リッドに開いた穴に箸やフォークを刺して、蓋の開け締めを行なうことができます。
ユニフレーム シェラリッド300チタン
折りたたみ式の取っ手が付いた、チタン製の蓋です。
取っ手を畳んだ状態では直径12cm、厚さ8mm、重量は32gと超軽量コンパクト。
プリグレース ちょっと重めのシェラカップリッド
新潟県燕市でステンレスカトラリーを手がける片力商事が2021年にスタートさせたブランド【プレグリース】。
80gと少し重めに作られた蓋で、重しを使わなくても安定した圧力がかかり、シェラカップ炊飯にはピッタリです。
キャプテンスタッグ シェラカップ用フタ 竹製
珍しい竹製のシェラカップ用蓋。
蓋だけでなくコースターになったり、ちょっとしたカッティングボードになったりと、持っておくと便利なひと品です。
バーナーパット
シェラカップ炊飯で使うシングルバーナーなどでは、一箇所に炎が集中しがちで、焦げが出やすかったり、芯が残る原因になったりします。
しかし、炎を熱に変えカップ全体に熱を伝えるバーナーパットは、あると便利なひと品です。
特に熱伝導率の悪いチタン製シェラカップを使う場合には、バーナーパットなしでうまく炊くのは難しいほど。
また、バーナーパットを敷けば、ゴトク上でカップが安定するといったメリットもあります。
ユニフレーム バーナーパット
5cm角の正方形をしたユニフレームのバーナーパットは、シングルバーナーで使うにはピッタリのサイズです。
重量も65gと軽量ですので、荷物のスキマに忍ばせておくことをおすすめします。
エンハイク ハイメッシュバーナーパット
直径15.5cmの丸形バーナーパッドなので、より均一な熱の伝わりを助けます。
シングルバーナーだけでなく、アルコールストーブやポケットストーブなど、広範囲に利用できるひと品です。
【まとめ】シェラカップ炊飯は事前準備とタイミングが重要
ソロキャンプにピッタリサイズの、0.5合のお米を炊くシェラカップ炊飯について、3つの検証を交えてご紹介してまいりました。
検証からわかったシェラカップ炊飯のコツは次の通り。
・お米90mlに対して水110ml(総量200ml)
・お米の吸水は必ず行う
・最初は強火で、お湯が湧いたらとろ火
・沸騰するまでは焦げ付かないようお米をかき回す
・「パチパチ」という音が聞こえ香ばしい匂いがしたらすぐに火を止める
・蓋ごとタオルでつつみ10~15分ほど蒸らす
・蓋は必須(できれば専用蓋が望ましい)
・バーナーパットがあればなおよし(チタン製シェラカップなら必須)
こうした点に気をつければ、芯も残らず焦げ付きもない、おいしいご飯を炊くことができます。
クッカーなしでご飯を炊くことができるシェラカップ炊飯なら、バックパックのソロキャンプでも極限まで荷物を減らすことができますし、なにより『できるキャンパー』にステップアップできますよ。