防水素材の代名詞ともいえる「ゴアテックス®」という素材をご存知ですか?
キャンプやアウトドアスポーツをある程度やったことがある方なら、一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。
では、ゴアテックス®がどのような素材で、どのくらいの寿命を持っているか知っていますか?
実はゴアテックス®には明確な寿命という基準はなく、すべては洗濯などのお手入れ方法によって変わるのです。
そこでこの記事では、ゴアテックス®の寿命を伸ばすおすすめの洗濯方法を5ステップで解説するとともに、ゴアテックス®の劣化を防いで寿命を長持ちさせる方法をご紹介します。
せっかくの高機能素材ゴアテックス®を、長く愛用するためにぜひご参考としてください。
ゴアテックスの寿命を伸ばすおすすめの洗濯方法
アウトドア用のウェアやスポーツウェアでよく見かける「GORE-TEX®」のロゴ。アウトドアに詳しい人ほど、信頼感のあるロゴに見えるのではないでしょうか。
そんな高機能素材ゴアテックス®の、寿命を伸ばす洗濯方法について解説します。
ゴアテックスの寿命はお手入れ次第
出典:日本ゴア合同会社公式ホームページ
最初にお伝えしたように、ゴアテックス®の寿命に明確な基準はありません。
布に防水加工などがされた他の素材と違い、素材そのものが防水性能を持ったゴアテックス®は、適切な使用法、適切なメンテナンスさえ行っていれば、素材の持つ防水性が損なわれることはほぼないのです。
とはいえ、その「適切な」ということを理解していなければ、素材の劣化につながってしまうでしょう。
せっかくの高価なゴアテックス®製品の寿命を少しでも伸ばすのは、すべてお手入れ次第なのです。
劣化を防ぐ洗濯方法5ステップ
出典:日本ゴア合同会社公式ホームページ
では、ゴアテックス®の劣化を防ぐ選択の方法を、5ステップでご紹介します。
方法自体はなにも難しいものではありませんので、ゴアテックス®製品をお持ちの方はぜひお試しください。
ステップ1:洗濯表示を確認する
基本中の基本として、製品タグなどに書かれた洗濯表示を確認し、「必ず」その指示に従ってください。
その際にチェックすべきは「洗濯機の使用ができる」のか、「ドライクリーニングが必要」なのかです。
ここで「ドライクリーニングが必要」な製品であった場合は、家庭で洗うことはあきらめて、クリーニングに出すことを考えましょう。
ゴアテックス®とひとくちにいっても、アイテムごとに洗濯方法(表示)は違うのです。
洗濯表示を確認せず、なんでもかんでも自宅の洗濯機で洗ってしまうと、せっかくの品質を劣化させることにつながり、取り返しのつかないことになりかねませんので、まずはこの確認だけは絶対に忘れないようにしてください。
ステップ2:洗う準備をする
洗濯機で洗える製品である場合は、ここから先に進みます。
まずは、ゴアテックス®を洗う準備をしましょう。
洗濯中にアイテムが傷つくのを防ぐため、外せる部品はすべて外し、ファスナーやポケットなどはすべて閉めておきます。
ファスナーが開いたまま洗濯してしまうと、袖などとからみあったりしてウェア自体を傷つけてしまう可能性もありますので、十分に注意してください。
ステップ3:洗濯する
洗濯の際は、医療用液体洗剤を通常より少なめにして使用します。
粉末洗剤や漂白剤、柔軟剤、しみ抜き剤は、成分が残ってしまったり、ウェアの性能に影響を与えたりする可能性もありますので、使用しないようにしましょう。
また、洗濯の際は40℃以下のぬるま湯で洗濯すると、より素材を傷めずきれいに汚れが落ちます。
ステップ4:すすぎをする
通常の洗濯時より、すすぎの手順は重要です。
必ず2回以上のすすぎを行い、微量な洗剤も生地に残さないようにします。
また、最後の脱水にはあまり時間をかけず、弱めに軽く行う程度で構いません。
ステップ5:乾燥する
十分にすすぎ、軽く脱水を行ったウェアは、ハンガーなどにかけて陰干しするようにします。
洗濯表示で乾燥機の使用がOKとなっていた場合は、乾燥機での乾燥も可能です。
ただし、品質の劣化を防ぐためにも、高温での乾燥は避け、中温でなるべく短時間の使用に抑えておくことをおすすめします。
参考:GORE-TEX Brand Japan/YouTube
洗濯時の注意点
出典:日本ゴア合同会社公式ホームページ
洗濯の5ステップはおわかりいただけたでしょうか。
ここでは、手順に合わせて洗濯する時のさまざまな注意点についてご紹介しておきます。
洗濯のタイミング
キャンプでは、焚き火の煙や調理油の揮発など、ウェアには想像以上の誇りが付着します。
そのため、特に焚き火をしたキャンプなどでは毎回キャンプ後に、焚き火をしていない時でもなるべく頻繁に洗うようにしてください。
ゴアテックス®の洗浄、乾燥、熱処理は耐久撥水(DWR)の回復にも役立ち*ます。
*GORE-TEX SHAKEDRYTMアウターウェアは乾燥機の利用はできません。
洗剤の種類と量
洗剤は、必ず液体のものを使用します。
粉末洗剤は、ウェアに付着しやすく、しっかりとすすげない可能性もありますので使用しないようにしてください。
また、通常の使用よりも少なめの量を心がけ(1オンスあたり約30mlが推奨)ます。
汚れがひどい場合は、汚れた部分を液体洗剤を入れたぬるま湯にしばらく浸け、その後軽く手洗いしてから洗濯機に入れるのもよいでしょう。
すすぎが重要
ゴアテックス®を洗濯する際には、なによりもすすぎが重要です。
少しでも洗剤がウェアに付着したままでは、性能が劣化し、寿命をへらすことにもつながりかねません。
取り出したウェアに洗剤の香りが残っているようなら、念のためにもう一度すすぎをするのもよいでしょう。
乾燥機とアイロン
表生地の撥水性が落ちてきたなと感じたときは、洗濯・乾燥後に熱処理をすることで、撥水性が回復します。
乾燥機の場合は、完全に乾燥した後に20分温風乾燥をするとよいでしょう。
また、低温でスチームなしの設定であて布をしてアイロンをかけることも有効です。
ただし、どちらの場合も洗濯表示で乾燥機使用やアイロンがNGとなっていないことは必ず確認してから行ってください。
洗濯後のメンテナンス
洗濯後は、たたまずハンガーに干したまま保管します。
また、乾燥機やアイロンで撥水回復処理を行っても、ウェア表面が水を弾かなくなったと感じるようになったら、市販のウォッシュインタイプ、またはスプレータイプの撥水剤を使用するのもよいでしょう。
その際は、撥水剤の説明書をよく読んで、その使用方法どおりに行ってください。
寿命を伸ばすにはゴアテックスを理解しよう
出典:日本ゴア合同会社公式ホームページ
基本的にゴアテックス®に寿命はなく、すべてはメンテナンス次第ということはおわかりいただけたかと思います。
しかし、せっかくの高価なゴアテックス®の寿命を少しでも伸ばし、できるだけ長く愛用するためには、ゴアテックス®という素材を理解することも重要です。
そこでこの章では、ゴアテックス®という素材はどういうものなのかを、かんたんにご紹介します。
ゴアテックスは万能素材ではない
出典:日本ゴア合同会社公式ホームページ
布地にあとから加工を施したわけではなく、布地自体が防水耐久性、防風性、そして透湿性をかねそなえたゴアテックス®は、雨・風・寒さに対しての高機能性が求められるアウトドアウェアなどに使用するには、実に理想的な素材です。
ゴムやビニールのように防水性だけがあり、透湿性のない素材ではなく、風と水は通さないけど湿気は外に出してくれるというゴアテックス®は、一見万能の素材のように思えるかもしれません。
とはいえ、当然ながらゴアテックス®とはいっても万能素材ではないのです。
使用方法やお手入れ方法が悪ければ、その性能を劣化させてしまいますし、金額の元を取る前に寿命がきてしまうかもしれません。
そうならないためにも、ゴアテックス®という素材を理解しておくことが重要なのです。
2種類のゴアテックス
出典:日本ゴア合同会社公式ホームページ
ゴアテックス®とひとくちにいっても、大きく「黒タグ」と「白タグ」の2つにわけられます。
「黒タグ」は「GORE-TEX®プロダクト」と呼ばれ、防水機能に特化してつくられています。
「白タグ」は「GORE-TEX® INFINIUMプロダクト」と呼ばれ、防水性よりもパフォーマンスを優先してつくられているのです。
つまり、一般に「ゴアテックス®」といっても、その防水性能には違いがありますので、購入時には注意してください。
「ゴアテックスにしては安い」と思って飛びついても、それが白タグ製品であった場合、レインウェアとするには防水性が足りないということもあり得ます。
ゴアテックスがもつ3つの機能性
ゴアテックス®は、3つの機能性を持っているためにアウトドアウェアなどで重宝されています。
3つの機能性は、次の通りです。
防水性:水をはじく機能。黒タグ製品であればレインウェアとして利用しても通常のアウトドア用途では十分耐えられる性能を持っている
防風性:風とは「空気のかたまり」として体にあたるため「風」として感じる。しかしゴアテックス®は微細な網の目をくぐる形でしか空気を通さないため、体は風と感じない。また汚れ防止の加工も、風を通さない仕組みとなる
透湿性:水は通さないけれど、水蒸気は通す。そのためウェア内で体から発せられた水蒸気が外に逃げ、湿気としてこもらない
また、ゴアテックス®自体が持っている防水性能ですが、生地がぬれたままだと重くなったり、水で寒さを感じてしまったりしてしまいます。
そこで、布地表面の水が流れるように撥水加工をほどこして、さらなる性能アップを図っているのです。
ゴアテックスの構造
ゴアテックスメンブレンの拡大映像
出典:Facebook/GORE-TEX Brand
防水性能の高いGORE-TEX®プロダクトは、表地と裏地の間に「ゴアテックス®メンブレン」と呼ばれる、薄い膜が挟まれています。
このゴアテックス®メンブレンこそが、ゴアテックス®の核となる部分で、特殊製法によって作られた微細な網目状をした特殊素材です。
この網の目は「水は通さず、水蒸気だけを通す」サイズとなっているため、ゴアテックス®特有の防水性・防風性・透湿性を生み出す仕組みとなっています。
そして、このゴアテックス®メンブレンに表地と裏地を貼り合わせたものが、「ゴアテックス®ファブリック」と呼ばれ、ウェアなどに使われる生地となるのです。
ゴアテックスの寿命をへらすNG行動
出典:日本ゴア合同会社公式ホームページ
ゴアテックスの洗濯方法と、その素材特徴をわかっていただいたところで、最後はゴアテックス®の寿命をへらすNG行動についてご説明します。
これらの行動1つひとつは、ちょっとしたときにやってしまいがちかとは思いますが、こうしたことに気をつけることで、大切なウェアを長く愛用し続けられることにもなりますので、気にかけてみてください。
使用後にほったらかす
出典:日本ゴア合同会社公式ホームページ
ゴアテックス®の寿命を伸ばすには、できる限りこまめなメンテナンスが重要です。
汚れたらすぐに落とす。焚き火のそばで使ったらすぐに洗濯する。こうしたメンテナンスをマメに行うことで、生地性能だけでなく撥水機能の低下も起こさずにすみます。
雨にぬれたウェアを、車の中にぬれたままビニールに入れてほったらかしているなんて、絶対にNGです。
直射日光の元で干す
ゴアテックス®製品を干す場合には、必ず陰干しとしてください。
直射日光の元で紫外線にあて続けると、ゴアテックス®メンブレンはともかく表地などが痛みやすくなり、撥水性能もすぐに悪くなってしまうでしょう。
高温をあて続ける
出典:日本ゴア合同会社公式ホームページ
洗濯後に乾燥機やアイロンで軽く熱を与えるのは、ゴアテックス®製品の撥水性能を長持ちさせるためにも有効です。
しかし、あまりに高温を長時間にわたってあて続けるのは、布地のためにはよくありません。
本記事でも書いた内容を参考として、適度な熱処理を心がけてください。
湿気のある場所で保管する
ゴアテックス®の保管は、湿気を避けて行うようにしましょう。
ベランダの倉庫や、車の中などは高温多湿状態になりやすく、布地を傷めるだけでなくウェアのシームテープがはがれてしまう可能性などもありますので、絶対に避けてください。
たたんだまま長期保管する
出典:日本ゴア合同会社公式ホームページ
ゴアテックス®ウェアを保管するときは、必ずハンガーなどにかけておくようにしてください。
たたんだまま長期保管をすると、折ジワがついてしまう可能性もありますし、なにより湿気を逃がすことができません。
撥水スプレーを過信する
出典:日本ゴア合同会社公式ホームページ
防水性・防風性・透湿性は素材自体が持っている特性ですので、ゴアテックス®メンブレン自体が傷ついたりしないかぎり、機能が低下することはありません。
しかし、撥水性はあとから加工されたものですので、徐々に低下してしまいます。
この撥水性は熱を加えることにより復活しますが、それでもダメな場合は撥水スプレーを利用することになるでしょう。
とはいえ、撥水スプレーを過信しすぎるのは危険です。
加熱による撥水性が期待できなくなったゴアテックス®は、徐々に性能が低下していくもので、それを撥水スプレーで防ぎきることはできないのです。
こうした場合は、あきらめて買い替えを検討したほうがよいかもしれませんね。
そうならないためにも、上記に解説したような使用後のお手入れをおこたらないように注意してください。
まとめ
防水性・防風性・透湿性にすぐれたゴアテックス®の洗濯方法や、洗濯時や使用に際しての注意点について解説してきました。
ゴアテックス®は、過酷な環境下でも耐えうるアウトドアウェアにはもってこいの素材です。
それは、ていねいな取り扱いを心がければ、ずっと愛用し続けられる相棒にもなってくれるでしょう。
ゴアテックス®の特性や、本記事で紹介した注意点などをよく理解し、ぜひともお気に入りの1着を大切な思い出とともに末永く使い続けてください。