無骨なギアを好むこだわり派のソロキャンパーを中心に、今ひそかな人気を集めているヴィンテージギアが「アイロンストーブ」です。
卓上でも使えるコンパクトサイズながら、暖房・調理・照明と一台三役を兼ねたアイロンストーブは、いまや男前なソロキャンプには欠かせないアイテムともいえるでしょう。
以前当サイトでも、アイロンストーブの人気商品紹介と入手方法を解説した記事を公開しましたが、今回はアイロンストーブの燃料について解説します。
さらに、選び方も合わせて解説しますので、どうぞご参考にしてください。
「アイロンストーブ」の燃料はオイルランタンと同じ
出典:WINNERWELL公式サイト、Amazon
アイロンストーブの一つの役割である「灯り」。昨今のキャンプで灯りといえば、LEDランタンが主流となっています。
しかし、こだわり派ソロキャンパーに人気が高いのは、やはり「ハリケーンランタン」などの「オイルランタン」ではないでしょうか。
キャンプで使用されるアイロンストーブの多くは、このオイルランタンと同じ燃料を使用しています。
では、ここでいう「オイル」とは何を指すのか?他の燃料は使用できないのか?
本章では、まずはアイロンストーブの原理について解説し、あわせて使用する燃料について徹底解説します。
アイロンストーブの原理
出典:WINNERWELL公式サイト
アイロンストーブとは、もともと電気が普及していない時代に、衣類のシワを伸ばす「アイロン」を温めるために100年以上も前に開発された「ストーブ」のことです。
アイロンストーブには小型・大型さまざまなサイズがあり、その機構や形も多岐にわたっています。
そのなかでも現在キャンプで使用されているアイロンストーブの多くは、ボディ下部のタンクに燃料を入れる形をしています。そこから上部に布製(綿、あるいは綿とグラスファイバーの混紡など)の芯が伸びており、それに火をつけることで芯が燃料を吸い上げ燃焼し続けるのです。
ただし、オイルランタンの芯が一般的に10~20mm幅が多いのに対して、アイロンストーブの芯は90~120mmなど幅の広いものが一般的です。
そのため、アイロンストーブはオイルランタンよりもはるかに熱量が高く、より明るい光量を生み出します。
アイロンストーブの燃料別特徴
出典:Amazon
アイロンストーブの燃料に使われる「オイル」とは、一般的に灯油とパラフィンオイルのことを指しています。
ここではその両者の特徴にあわせ、さらにその他の燃料についてご紹介します。
パラフィンオイル
パラフィンオイルとは、石油を蒸留して生成された液体で、ローソクのロウとほぼ同様の成分でできあがっています。
引火点が95度以上と高く、石油より揮発性が低いため専用の容器を用意する必要もありません。
ECサイトの他、キャンプ用品店やキャンプ用品を扱っているホームセンターなどでも購入できますので、キャンプ初心者でも比較的安全かつ気軽に使用できるでしょう。
また、燃焼中の臭いもなく、ススもほとんど出ないので、器具の掃除やメンテナンスの手間を大幅に軽減してくれます。
ただし、その価格は1Lあたり1,000円前後と高価なため(2024年1月現在)、ランニングコストはお高めです。
なお、夏場に便利な虫のキライな香りを付けたパラフィンオイルも販売されているので、虫よけランタンとして使用することもできます。
灯油
パラフィンオイルと同様、石油を原料に常圧蒸留してつくられた液体です。別称で「ケロシン」と呼ばれることもあります。
ガソリンスタンドなどで取り扱っているため、入手は比較的容易です。しかも、1Lあたり100円ちょっと(2024年1月現在)で購入できるので、コスパを求めるキャンパーにはうれしいでしょう。
ただし、灯油の持ち運びには専用の容器が必要ですし、引火点も40度(硫黄分80ppm以下の製品)と低いため発火の危険が高く、初心者が取り扱うには少しハードルが高くなります。
また、灯油そのものも燃焼中も独特の臭いと有毒成分を発しますので、特にせまいところでの使用には十分な注意が必要です。
さらに、燃焼するとススを発生させますので、アイロンストーブの中が汚れるためマメなメンテナンスを必要とします。
白灯油
主にキャンプ用品などに対応するため、精製度を高め不純物を取り除いた白灯油(はくとうゆ)と呼ばれる製品も販売されています。
引火点や取り扱いは灯油と同等ですが、パラフィンオイルのように無臭で、有毒成分なども少ないため取り扱いは容易です。
キャンプ用品やECサイトなどで、500mlや1L容量など金属ボトル入りの製品が販売されていますので、別に専用のボトルを用意する必要もありません。
ただし、価格はパラフィンオイルと同じぐらいしますし、かといってパラフィンオイルよりはススの発生量も多いため、正直いってどっちつかずの燃料といえます。白灯油をわざわざ用意するぐらいなら、多くのアイロンストーブメーカーが推奨しているパラフィンオイルを燃料にするほうがよいでしょう。
その他の燃料
アイロンストーブには、キャンプ用につくられたものだけでなく、古くから家庭で使われていたヴィンテージ物の製品や、家庭でインテリアとなるように新しく開発された製品もあります。
これらのなかには、木材やペレット、石炭などの固形燃料を使用している製品もあります。
ただし、現在キャンプでの利用に適したアンティーク物のアイロンストーブや、最初からキャンプ用に開発された新しいアイロンストーブのほとんどは、灯油かパラフィンオイルを燃料として指定しています。
特に、多くのメーカーでは器具に負担が少なくメンテナンスの必要性を軽減してくれる、パラフィンオイルを推奨している場合がほとんどです。
価格面で問題がないのであれば、できるかぎりパラフィンオイルを燃料に選ぶようにしましょう。
アイロンストーブの選び方
出典:Ranker公式サイト
レトロ感あふれる見た目で、一挙三得に使えるカッコよく便利なアイロンストーブですが、実際に購入するときにはどういった点に注意すればよいのでしょう。
ここでは、アイロンストーブの選び方をご紹介します。
製造時期に注意
まず注意したいのは、アイロンストーブとひと口にいっても、現在キャンプなどで使用されれているアイロンストーブのなかにも、製造時期や製造コンセプトによって3つの種類があります。
それぞれの違いについて説明します。
ヴィンテージ品アイロンストーブ
アンティーク(骨董品)にも分類されるヴィンテージ品アイロンストーブは、その名のとおり実際に100年以上前に使用されていた、当時のままの姿をとどめた製品です。
骨董品としての価値もあり、実に趣深い「使用感」をもったアイロンストーブですが、メンテナンスなどには相当の気を使う必要があります。
また、当時の姿をそのままとどめて、今でも使用に耐えうるアイロンストーブは希少で、当然ながらその分価格も非常に高価です。
復刻品アイロンストーブ
アイロンストーブが活躍していた当時の形をそのまま、現代の技術でよみがえらせた「復刻」品のアイロンストーブもあります。
こちらは、製造年こそ現代ですが、その形や機能は当時の製品をそのまま再現していますので、気分だけは100年前にタイプスリップしそうです。
また、現代の金属加工技術が使われて復刻された製品のため、アンティークほどデリケートなメンテナンスは必要なく、価格も比較的安価で手に入ります。
新品のアイロンストーブ
100年以上前に使用されていた、古き良きアイロンストーブの雰囲気を残しながらも、新たに現代のキャンプシーンで利用しやすいように設計段階から考えられた、新品のアイロンストーブもあります。
これらは最初から現代の、しかも日本の気候環境にあうように設計・製造がされていますので、キャンプ場での使用時や使用後のメンテンナンスへ必要以上に気を使う必要もありません。
価格も比較的安価なものが多いので、まずはアイロンストーブを使ってみたいという人でも、気軽に手を出せるはずです。
アイロンストーブのサイズ
多くのキャンプ用アイロンストーブは、卓上で使用することを前提に考えられたコンパクトなサイズです。
とはいっても、ソロキャンプなどでよく利用されている、小型ローテーブルの上に置いておくには、少々大きすぎるかもしれません。
こちらもご自身が使用するテーブルなどとのサイズとあわせて、購入前に十分検討してください。
ここでは、代表的なアイロンストーブ3製品のサイズと重量を一覧表にまとめておきます。
項目 | COLONISTA HOT NUMBER | WINNERWELL IRON STOVE | INDRA No.1 |
幅(cm) | 17.0 | 19.9 | 20.5 |
奥行き(cm) | 12.0 | 13.0 | 16.5 |
高さ(cm) | 23.5 | 25.0 | 28.0 |
重量(kg) | 3.5 | 2.4 | 4.2 |
アイロンストーブの希少性
アイロンストーブをもつ一番のメリットといえば、「希少価値のあるこだわりのキャンプギアをもっている」という満足感ではないでしょうか。
ヴィンテージのアイロンストーブであればなおのこと、復刻品・新品に限らず、まだまだアイロンストーブを使用しているキャンパーは少ないはずです。
「人とかぶらないキャンプギアが欲しい」というのは、多くのこだわり派キャンパーに共通する欲求だと思います。
その場合、できるかぎり販売個数が少なく、レア感のあるアイロンストーブを選ぶのもおすすめです。
新作として販売されているアイロンストーブでも、限られた期間だけの予約販売や限定生産の製品もありますので、マメにメーカーのホームページを確認しておくことをおすすめします。
アイロンストーブの利便性とムード
出典:WINNERWELL公式サイト
アイロンストーブを購入するには、このユニークな製品が自分のキャンプスタイルにあうかどうかを考える必要があるでしょう。
そのために、改めてアイロンストーブがもつ3つの用途を考えてみます。
- 暖房器具:コンパクトな外見に関わらず、しっかりと周囲を暖めてくれる暖房効果がある
- 調理器具:製品上部がアイロンを置ける平らな形状をしているため、アイロンの代わりに鍋釜やケトルなどを置けばバーナー代わりに調理ができる
- 照明器具:オイルランタンなどよりははるかに太い芯を使用しているため、光量の多いランタンとして使え、揺らめく炎が焚き火のような安心感を与えてくれる
アイロンストーブがもつ3つの役割をすべて使用すると考えれば、バーナーやオイルランタン、あるいは他の暖房器具が必要なくなるかもしれません。そうなれば、荷物を大幅に減らすことができ、ソロキャンプなどには便利でしょう。
しかし、暖房効果は一般的な石油ストーブよりは劣りますし、調理器具としての使い勝手もガス燃料のシングルバーナーほどではありません。一つひとつの性能は、当然ながら専用品には敵わないのです。
ただし、その醸し出すムードは他のキャンプギアでは味わえない、独特な雰囲気をもっています。
つまり、アイロンストーブのもつ利便性とそのムードを天秤にかけ、どの程度自分のキャンプスタイルにあっているのか。はたして使いこなせるのかも、購入にあたっては考える必要があるでしょう。
とはいえ、その存在感は一級品ですし、キャンプで使わなくなったとしても自宅のインテリアとしても使えるのがアイロンストーブです。そしてなにより「アイロンストーブをもっている」という所有欲は十二分に引き出してくれます。
あなたのキャンプスタイルと、その使用目的にあわせて「あり」と判断したのであれば、ぜひこのこだわりのキャンプギアを手に入れてください。
アイロンストーブはどこで販売している?
出典:WINNERWELL公式サイト
こだわり派キャンパーの間で徐々に人気が高まるアイロンストーブですが、まだまだその存在はポピュラーとはいえません。
では、そんなマニアックな製品であるアイロンストーブは、いったいどこで購入できるのでしょうか。
ここでは、アイロンストーブの入手方法をご紹介します。
アイロンストーブはAmazonで買える?
出典:Amazon
ECサイト最大手のAmazonですが、アイロンストーブは販売しているでしょうか。
結論からいえば、この記事執筆時点の2024年1月時点(以下、同様)では、Amazonにアイロンストーブを販売している専用業者は登録されていないようです。
ただし、時おり中古品が販売されていることがありますので、マメにチェックをすれば掘り出し物に出会えるかもしれません。
アイロンストーブは楽天市場で買える?
出典:楽天市場
国内最大手のECサイト楽天市場では、「ThousWinds」というメーカーの「ファイヤーダンスストーブ」が1つだけ確認できました。
製造元の「ThousWinds」というメーカーは、「機能性と美しさ」を兼ね備えたキャンプギアの製造開発に重点を置いた、中国生まれの急成長中キャンプギアブランドで、ランタンなどを中心に製造・販売しているようです。
しかも、中国製品らしく販売価格が28,800円(執筆時)という価格は、アイロンストーブとしては破格の部類に入りますので、まずはアイロンストーブを試してみたいと思う人にはいいかもしれません。
アイロンストーブ製造・販売店3選
現在、アイロンストーブを確実に手に入れるには、製造・販売しているメーカーの自社サイトで直販品を狙うのがおすすめです。
ここでは、日本でも人気の高い3つのアイロンストーブブランドをご紹介します。
COLONISTA(コロニスタ)アイロンストーブ公式サイト
山形県庄内町で生まれたブランド「COLONISTA(コロニスタ)」は、「守りたい職人の技術」と「新しいアイディア」を組み合わせたモノづくりを掲げ、職人が一つひとつ手づくりしているブランドです。
ランタンシェードやその他の小物など、独特のデザイン性をもったオリジナル製品が特徴のブランドで、「HOT NUMBER」という1つのオリジナルアイロンストーブを販売しています。
WINNERWELL(ウィンナーウェル)アイロンストーブ公式サイト
WINNERWELL(ウィンナーウェル)は、福岡県久留米市に本社を構えるキャンプ用コンパクト薪ストーブを中心に製造・販売しているブランドです。
薪ストーブやオーブンなどのオプション品ブランドとしては、特に冬キャンプをたのしむキャンパーの間では人気と信頼を集めています。
同社では、薪ストーブでつちかった技術を用いて、1種類のアイロンストーブを販売しています。ただし、基本的に期間を区切った予約販売しか取り扱っていないため、販売サイトかをマメにチェックして、販売予定を確認しておくとよいでしょう。
INDRA(インドラ)アイロンストーブ販売サイト
出典:INDRA販売サイト
アウトドアギアショップ「Ranker」は、愛媛県に居を構え釣具を中心にアウトドアギアを販売しているブランドです。
現在は木製・革製を中心とした、こだわりキャンパーの心をくすぐるさまざまなギアを販売してます。
同社は、地元の有限会社西永工業、アウトドアショップELK、洋燈屋ICHIの愛媛県の3社と共同でプロジェクトを立ちあげ、INDRA(インドラ)アイロンストーブを開発し、製造・販売をおこなっており、現在はサイズ違いのNo.1、No.2がラインナップされています。
ヴィンテージ品アイロンストーブの入手方法
出典:メルカリ
復刻品や新品のアイロンストーブであれば、有名ECサイトや製造ブランドの直販サイトをチェックすれば、期間のしばりはあるものの確実に手に入れることができるでしょう。
しかし、ヴィンテージ品のアイロンストーブはどこで手に入るのでしょうか。ここでは、ヴィンテージ品アイロンストーブの入手方法を紹介します。
オークションサイトで探す
ヴィンテージ品アイロンストーブの入手方法として、もっとも代表的なのが「Yahoo! JAPANオークション」などのオークションサイトでしょう。
最近はアイロンストーブが徐々に注目を集めていることもあって、少なくとも2~3点の出品が常時確認できます。
フリマサイトで探す
「メルカリ」などに代表される、フリマサイトでも最近はアイロンストーブの出品を見かけるようになってきました。
フリマサイトには個人だけでなく、業者が在庫処分に使用している場合もありますので、タイミングがあえばヴィンテージ品だけでなく、すでに完売となった復刻品などのアイロンストーブが手に入ることもあるかもしれません。
リアル店舗で探す
100年以上前に使われていたアイロンストーブは、まさに骨董品です。そのため、すべて一点ものになりますし、購入するには運も必要でしょう。
ただし、かなり特殊な製品になるため、町中のアンティークショップで扱っていることは少なく、1軒1軒回るのは現実的とはいえません。
そこで、「トレファクスポーツアウトドア」や「アウトドアパラダイス」など、キャンプ専用の中古ショップなどを探してみるのをおすすめします。
こうしたショップでは、ヴィンテージランタンなども取り扱っているため、ヴィンテージアイロンストーブが入荷することもあるでしょう。
ヴィンテージギア「アイロンストーブ」で男前なソロキャンプを楽しもう
ソロキャンパーを中心に、徐々に人気が出はじめてきたアイロンストーブは、比較的手に入りやすい灯油やパラフィンオイルを燃料とした一台三役のこだわりアイテムです。
ただし、ヴィンテージ品ではない復刻品や新品でも、ほとんどのアイロンストーブキャンプギアとしては高額の部類に入りますので、その役割がご自身のキャンプスタイルや、使用目的にあっているのかをしっかりと考えて購入するようにしましょう。
しかし、スタイルにピッタリあうと判断したのであれば、これほど他のキャンパーとかぶらない、こだわりのキャンプギアはそうそうありません。
お気に入りのアイロンストーブを手に入れて、ぜひ男前なこだわりのソロキャンプを楽しんでください。