「魔法の鍋」「万能調理器具」と呼ばれることもあるダッチオーブンは、数ある調理器具の中でも、もっともキャンプ気分を盛り上げてくれるものの1つです。
凝った料理をつくる場合でも、ほったらかし調理ができることもあって、ダッチオーブンは多くのお料理好きキャンパーに愛されています。
そこでこの記事では、キャンプ初心者や子どもでも比較的かんたんにできる、ダッチオーブンの人気ほったらかしレシピ3選をご紹介します。
さぁ、今週末は車にダッチオーブンを積み込んで、お料理キャンプに出かけましょう!
ダッチオーブンはほったらかし調理ができる魔法の鍋
ダッチオーブンでほったらかしレシピを楽しむには、ダッチオーブンの特性を理解していなければなりません。
まずは、ダッチオーブンの魅力と調理のコツをご紹介します。
ダッチオーブン料理の魅力
ダッチオーブンとは鋳鉄やステンレスなど、本体とフタともに厚みのある金属で作られた鍋です。
その魅力は数え切れませんが、例をあげると次のようなものがあります。
・厚みのある金属のためダッチオーブン自体が熱をたくわえ逃がしにくく、食材に均等に熱を伝えてくれるので失敗が少ない
・重量のあるフタのおかげで圧力鍋のような効果も期待でき、短時間で素材の中まで火が通り、食材のよさが際立つ
・フタの上に炭を置くなどすれば、素材の上下からまさにオーブンのように熱を加えることができる
・素材が持つ水分だけを使って蒸し料理を作る「無水調理」ができるので、素材本来のおいしさが存分に味わえる
・焼き物、煮物、揚げ物、燻製など調理法の幅が広い
・焚き火や炭火のほか、バーナーや電気コンロなど熱源を選ばないので、キャンプだけでなく家庭でも使うことができる
などなど。
ダッチオーブンレシピの中には、下ごしらえだけして鍋に放り込めば、あとはダッチオーブンが勝手に料理してくれる、なんてものも少なくありません。
そのおいしさは、まさに絶品!
「火にかけてほったらかしておいたら、勝手においしい料理ができあがった」
それが、ダッチオーブン料理最大の魅力です。
ダッチオーブンほったらかし調理のコツ
ダッチオーブンの魅力は、そのまま製品特性でもあります。
この特性を最大限に活かし、最高のほったらかし料理を作るためには、次のような調理のコツを覚えておくとよいでしょう。
購入後と調理後はシーズニングが必要
特に鋳鉄製のダッチオーブンを利用するには、使用前に「シーズニング」という「ならし作業」が必要です。
シーズニングで本体表面に薄い油の膜をつくることで、焦げ付きにくく使い勝手のよい鍋となります。
最近では、製品出荷時にメーカー側でシーズニングが行われた「プレシーズニング」製品も多くなっていますが、毎回の調理後にも使えるテクニックですので、シーズニングのやり方は一度勉強しておくと良いでしょう。
注)こちらの記事は鋳鉄製フライパン「スキレット」のシーズニング方法ですが、手順などはすべてダッチオーブンも同様です。
プレヒートが大事
きちんと手入れされたダッチオーブンは、シーズニングで作られた薄い油の被膜で覆われています。
そのため、必ず調理前には一度火にかけて油を焼き切ってから使わなければなりません。
また、鍋が冷たい状態から食材を入れてしまうと、焦げ付いてへばりついてしまうこともあります。
特に焼き物や炒めものにダッチオーブンを使用する場合には、「プレヒート」と呼ばれる予熱作業を必ず行いましょう。
基本は弱火
ダッチオーブンは、その厚く重い金属のボディに、大量の熱をたくわえます。
そのため、温度が上がりすぎてしまってもなかなか元には戻りません。
プレヒートしたあとのダッチオーブンは、必ず弱火で調理すると理解しておくことで、失敗のないおいしい料理が楽しめます。
特に本体とフタのスキマから湯気が見え始めたら、火加減を調整して弱火にすると心得ておきましょう。
途中でフタは開けてもいい
ダッチオーブンは重いフタを合わせることで、圧力効果で食材の芯までじっくりと火を通します。
そのため、レシピ本などでは「ダッチオーブン調理では絶対に途中でフタを開けてはいけない」という記述を見かけることもあるでしょう。
しかし、ダッチオーブンの圧力効果(ウォーターシール効果)は圧力鍋ほどではありません。
フタを開けずに焦がすなどの失敗をするくらいであれば、途中でフタを開けて確認したほうが安心です。
できあがった料理はほったらかさない
ダッチオーブンの素材は鋳鉄などの「鉄製」のため、当然ながら錆びます。
特に鍋の温度が完全に下がってしまうと、想像以上に早く錆びはじめますので、できあがった料理はなるべく早く器に盛り代えましょう。
トマトやレモンなど酸味のある食材を使った料理は、ダッチオーブンの酸化作用(錆び)を増幅しますので、特に注意が必要です。
なお、買ったばかりのまだ油がなじんでいないダッチオーブンでこうした酸味のある汁系料理(トマト煮やシチューなど)を作ると、鉄の「エグみ」が全体に回りとても食べられないものになる危険性もありますので、十分注意してください。
ダッチオーブンほったらかしレシピ3選
それでは、ダッチオーブンの入門編としても最適なほったらかしレシピを3つご紹介します。
どれも初心者の方が挑戦したり、子どもさんが手伝いながらでも楽しく作れるレシピですので、ぜひ一度お試しください。
その1:丸鶏のロースト
ダッチオーブンといえばこれ!というぐらい、ダッチオーブンレシピの代表格ともいえるのが「丸鶏のロースト」です。
最近はスーパーなどでも丸鶏を見かけることも多くなってきましたので、ぜひ一度お試しいただき、豪快にかぶりついてみてください。
(2~4人前、10インチダッチオーブン使用想定)
材料
•中抜きの丸鶏:1羽(内蔵を抜いて処理したもの)
•玉ねぎ:2個
•人参:2本
•じゃがいも:2個
•ローズマリー:1~2本
•塩:適量
•コショウ:適量
•にんにくチューブ:適量(お好み)
作り方
- 丸鶏の表面とお腹の中を流水で洗い、キッチンペーパーなどで水気を拭き取る(できる限り水分を飛ばしておいたほうがおいしくできあがる)
- 塩・コショウを丸鶏の表面とお腹の中にすり込む
- お好みでにんにくチューブ適量もすり込む
(塩・コショウ、にんにくをすり込んだあと、少し寝かせておくとよりおいしくなる) - 玉ねぎ、人参、じゃがいもを2~4個に切る(あまり小さくしないように)
- ダッチオーブンの底に専用の網を敷く(なければアルミホイルを適当に丸めたものを用意し、丸鶏が底に直接触れないようにすればOK)
- ダッチオーブン本体、フタともにプレヒートする
- 丸鶏をダッチオーブンの真ん中に置き、その周囲に野菜を並べる
- 丸鶏の上にローズマリーを乗せる
- フタをして火にかける。フタの上には炭や薪のおき火を乗せ、上下から加熱する(イメージとしては下火より上火が少し強いぐらい)
- フタのスキマから湯気が出始めたら、上下とも少し弱火にする
- 約1時間~1時間半(丸鶏のサイズにより調節)上下から加熱する
- いい匂いがしてきたらフタを開けて確認し、表面にきれいな焼き目がついていたら完成
- 大ぶりの器に盛りかえて、周囲に野菜を並べる
ポイント
周囲に添える野菜は、その他パプリカやブロッコリーなど彩りのよい野菜もおすすめです。ただしその場合は火の通りが早いため、途中から中に入れるようにしてください。
家庭などで上火が用意できない場合は、下火のみの加熱途中(約40分ほど)でフタを開け、上下をひっくり返して再度加熱すればOKです。多少、丸鶏表面がパリッときれいには焼けません(皮が剥がれてしまうなど)が、味は変わりません。
塩・コショウ・にんにくの代わりに、最近はやりの調合済みアウトドアスパイスなどを試してみるのも楽しいですね。
その2:キャベツ丸ごとポトフ
キャベツを丸ごと豪快に使ったポトフです。
食材本体だけでなく、熱々のスープも一滴残らず楽しめますので、寒い日などにはおすすめのレシピですよ。
(約4人前、10インチダッチオーブン使用想定)
材料
•キャベツ:1個
•玉ねぎ:2個
•人参:1本
•じゃがいも:2個
•ブロックベーコン:200gぐらい
•ウインナー:8本(大きいものであれば4本を半切り)
•にんにく:2~3片
•コンソメ(固形タイプ):1個
•塩:少々
•コショウ:適量
作り方
- 丸ごとのキャベツを芯側から8等分になるよう包丁を入れる。このとき、2/3ぐらいの深さで止め、切り離さないように
- 玉ねぎは皮を向いて4等分(大きければ8等分)
- 人参は皮付きのまま一口大に切る
- じゃがいもは皮をむいて4等分(小さめなら丸ごともしくは2等分)
- ブロックベーコンは適当な大きさに切る(完成時は縮むので、少し大きめがおいしい)
- にんにくは皮を向き、まな板の上にのせ包丁の背で軽くつぶす
- ダッチオーブンにキャベツの芯を下にして入れる
- 玉ねぎ、人参、じゃがいも、ベーコン、にんにく、コンソメを入れ、キャベツがひたひたになるぐらいまで水を入れる
- 塩で軽く味付けをする
- お好みでコショウを振る
- フタをして火にかける(下火だけでOK)
- 沸騰したら弱火にして、30~40分煮る
- 人参に竹串を刺しスッと入れば完成
- 火からおろしてフタを取り、キャベツがしんなりしてくるまで15分ほど予熱でおいておく
- シェラカップなどにとりわけ、好みでさらにコショウを振る
ポイント
スープにはベーコンの塩気が出ますが、どの程度になるかは完成しないとわからないため、塩味は少し控えめにしたほうがよいです。
加熱時間は素材の大きさによりますので、適宜調節してください。
トマトを入れてもおいしいですよ。
その3:スペアリブのコーラ煮
炭酸は肉をやわらかくする効果がありますので、スペアリブをホロホロとほぐれさせてくれます。
コーラの甘味もあいまって、難しい味付けなどせずともコクのあるおいしさがかんたんに味わえますよ。
(約4人前、10インチダッチオーブン使用想定)
材料
•豚スペアリブ:8本
•コーラ:肉の重量と同等
•にんにく:2片
•ショウガ:厚手のスライス1片(なければチューブショウガ少々)
•長ネギ:1本
•醤油:コーラの分量の約1/10
•塩:適量
•コショウ:適量
•マスタードなど
作り方
- スペアリブに塩・コショウをまぶし、30分~1時間程度放置(夏場は必ずアイスボックスで管理)。肉の表面に軽く水分が出てくればOK
- にんにくは皮を向き、まな板の上にのせ包丁の背で軽くつぶす
- 長ネギは4等分ぐらいに切る
- スペアリブ、にんにく、ショウガ、長ネギをダッチオーブンに入れコーラで満たす
- フタをして火にかける
- 沸騰したらアクを取る
- 醤油と塩・コショウで味付けして弱火で30~40分ほど煮る
- スペアリブがやわらかくなれば完成
- スペアリブを一旦取り出し、残った煮汁の味見をして、薄ければ味を足す
- 煮汁が少しとろっとしてくるまで煮詰める
- お皿にスペアリブを盛り付け、煮汁を回しかける
- お好みでマスタードなどを添える
ポイント
6のアク取りは必ずしなければならないわけではありませんが、やったほうがよりクリアな味わいになります。
ただし、ほったらかしレシピとしてそのまま放置しておいても、ちゃんとおいしくなりますよ。
煮込み時間はスペアリブの大きさによっても変わりますので、適宜調節してください。
コーラの味が強く出ますので、7の醤油や塩・コショウの量は控えめにしたほうが失敗しにくいでしょう。
完成20分ほど前にゆで卵をいれたり、できあがったスペアリブの表面を軽く炙ったりしてもおいしいですよ。
その他のダッチオーブンほったらかしレシピ例
キャンプ場で楽しめる、初心者でもかんたんなほったらかしレシピの代表3選をご紹介しましたが、ダッチオーブンはそれ以外にもほんとうにたくさんのほったらかしレシピが楽しめます。
ここでは、そんなかんたんでおいしいほったらかしレシピの内、特に筆者おすすめレシピのポイントを何例かご紹介しますので、ぜひ試してみてください。
丸ごと蒸し野菜
素材そのものの水分だけで調理する無水調理は、ダッチオーブンの魅力がもっともわかりやすい調理法です。
底網を入れた大きめのダッチオーブンに、人参、じゃがいも、玉ねぎ、とうもろこしなどを皮付きのまま入れて、30~40分(適宜調節)弱火にかけてください。
普通にスーパーで買った野菜でも、「野菜ってこんなにおいしかったの?」と思わずうなる味わいの蒸し野菜が味わえますよ。
かんたんスモーク
規定より1サイズ上の底網を用意すると、ダッチオーブンの中程に網を固定できます。
この仕組みを使って、ダッチオーブンで燻製(スモーク)を作ってみてはいかがでしょう?
プレヒートしたダッチオーブンの底に、アルミホイルで作った皿を敷いて好みのウッドチップを置きます。
そのあと網をセットして、プロセスチーズ、ゆで卵、ナッツ、ウインナーやベーコンなど、比較的水分の少なめな食事を乗せダッチオーブンを弱火にかけてください。
フタのスキマから煙がもれてきた段階から10~20分ほどしてフタを開けると、うっすら色づいたスモークができあがっています。
酒蒸し・ワイン蒸し
ダッチオーブンのサイズより2まわりほど小さめの金属製ボウルに、砂抜きされたアサリやハマグリなどの貝を入れます。
ダッチオーブンの底に網を敷き、アツアツになるまでプレヒートさせたあと、網の上にボウルを入れたらダッチオーブンの鍋肌からカップ1杯ほどのワインや日本酒を回しかけ、すぐさまフタを閉めます。
湯気が収まり(10~15分ほど)フタを開ければ、ボウルの中に見事に口の開いた酒蒸し・ワイン蒸しができあがっていますよ。
ボウルを入れるとき、アルコールを回し入れるときには、くれぐれもヤケドにはお気をつけください。
ケンタッキーな唐揚げ
冷たいダッチオーブンに底から20cmほどのサラダ油を入れ、好みの下味をつけた骨付き鶏肉を入れて火にかければ、驚くほどかんたんにホロホロほぐれる唐揚げができあがります。
ポイントは油が冷たいうちに肉を入れ、そのままゆっくりと温度を上げていくこと。途中でときどきフタを開け、肉をひっくり返しながらじっくり加熱するだけで、あの有名なフライドチキンのように骨離れのよい唐揚げの完成です。
ただし、スパイスの配合は門外不出ですので、ご自身で試行錯誤してくださいね。
焼き芋
丸ごと蒸し野菜のようにダッチオーブンにさつまいもを入れ、中火ぐらいで加熱するだけでホックホクの焼き芋ができあがります。
しかし、ここはもう少し手間をかけて、川原などで拾った砂利をきれいに洗い、ダッチオーブンの中に敷き詰めてみましょう。
その中にさつまいもを埋めて加熱すれば、あの屋台で食べる「石焼き芋」と同じ懐かしい味わいの焼き芋が楽しめますよ。
まとめ
多くのお料理キャンパーから愛される、魔法の鍋・ダッチオーブンの魅力をご紹介しました。
それに合わせてご紹介したレシピは、どれも下ごしらえさえしてしまえば、あとは火とダッチオーブンにお任せの気軽な「ほったらかしレシピ」です。
キャンプにおいて料理は大事な要素ですが、だからといって調理に手をかけすぎてのんびりする時間がなくなってしまっては本末転倒ですよね。
キャンプの時間を存分に楽しみながら、おいしく凝った料理が味わえるダッチオーブンのほったらかしレシピ。ぜひ、次のキャンプではお試しくださいね。