針葉樹と広葉樹の火力の違いをロマンチカル薪ストーブで比較してみた

今日は針葉樹と広葉樹の火力の違いについての検証結果をお送りします。

「ナラやクヌギなど広葉樹の方が火力強く良い」という話、焚き火や薪ストーブ好きの人なら、一度は聞いたことがあるのではないでしょうか? 私も何度も見聞きしているので「そんなものなのかなぁ」くらいに納得していました。

しかし最近冬キャンプで薪ストーブを使い始めて、暖房効果がとても切実な問題になってきたので、あらためて実際のところどの程度違うのか、温度を測定して検証してみることにしました。以下にその結果をご紹介します。焚き火や薪ストーブを使う際の薪選びの参考にいただければと思います。

目次

針葉樹と広葉樹とは

念の為、初めて聞く人のために、あるいは聞いたことはある人にも、おさらいの意味を込めて、針葉樹と広葉樹の違いを整理しておきましょう。

針葉樹(スギ・ヒノキ・アカマツ・カラマツ等)はすぐ燃え尽きる

その名の通り葉っぱが針のように尖っている。針葉樹は油分を多く含むため、火付きも良く燃えが早い。着火剤に向いている。柔らかいので割ったりフェザースティックを作るのも簡単。ストーブだとススがつき易いので一般的に嫌われる。

広葉樹(ナラ・サクラ・ケヤキ等)は良質な薪ストーブ燃料

葉が広く平たい。一般的に薪ストーブに使われる。針葉樹と比べて火持ちが良く、火力調整がしやすいのが特徴。ただ火付きはよくない。また硬くて細かく割るのも大変。

だけど諸説ある

ただし、改めて調べてみると、針葉樹が必ずしも劣るわけではないという意見もけっこうありました。信州大学の実験によると、重さで比べた場合の火持ちはほとんど変わらないとのこと。

これは少し考えれば納得ですよね、広葉樹は持ってみるとわかるのですが、重たいんです。つまり密度が高い。次のグラフを見てください。

木の燃える成分ってほとんどが炭素なんですけど、広葉樹と針葉樹って組成がほぼ同じなんですよね。そうすると重い方が長時間燃えるのは当たり前なんですよね。

つまり質の違いじゃなくて量の違いなんじゃないかと、私はなんとなく思っています。

実験の方法

で、実験の方法なんですが、よりキャンプに役立つ実用的な実験にしたかったので、テント用薪ストーブに入れて温度変化を調べてみるというシンプルかつ明快な方法にしました。

実験装置はロマンチカル薪ストーブ

今回は炎をたっぷり愛でることができる大きなガラス窓が特徴の新保製作所さんのロマンチカル薪ストーブを使いました。

冬キャンプにテント内でロマンチカルの炎を眺めながら過ごす時間は、高級ホテルで過ごす以上に贅沢な時間だと個人的に思いますよ。

小樽の製作所に直接行って購入しましたが、大人気で2019年度分は完売とのことでした。お店の方が使い方など非常に親切に教えてくれました。薪ストーブは煙突などの周辺パーツが必須ですし、やはり製造元で買うのが一番安心ですね。

薪ストーブ用の温度計を使用

薪ストーブ表面温度を測るこちらのアイテムで計測します。Signstecのストーブファンに付属してオマケなんですが、ちゃんと動くし性能には問題ないと判断しました。ちなみに数字が上と下で2種類書いてますが、上が華氏(ファーレンハイト)下が摂氏(セルシウス)で単位が違います。日本人の我々は下の摂氏をみましょう。白い塗りつぶしのところが適正温度ということになっています。130度から240度を維持すべしということですね。

ちなみこのストーブファンはなかなか優れものですよ。薪ストーブや石油ストーブを使うときは必ず使いましょう。ストーブファンの効果については別記事で紹介しています。

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実験に使う薪

つぎに実験に使う薪ですが、今回は同じ体積で揃えることにしました。

先ほど広葉樹と針葉樹のパフォーマンスの違いが、質ではなく、量の違いであるとの説明をしました。なのでこの条件だと針葉樹に不利なのは目に見えています。ですが、キャンプに行く時に重要なのは荷物がコンパクトに収まるかどうかなので、やはり同じ体積で比較することに意味があると判断しました。ただ、正確な測定は難しいので見た目でだいたい同じ量にしました。この点はご了承ください。ね、だいたい同じでしょ?

針葉樹を青文字広葉樹を燃えそうな赤文字で書くのは恣意的な感じもしますが、そこは気にしないように(笑)

ちなみにこちらのバケツはファイヤーサイドのラウンドウッドストッカー(小)です。布製のバッグと違って自立してるし、テフロン加工っぽい塗装でサビにも強くカッコよくて使い勝手いいです。

薪の水分量をチェック

ボクシング試合前の計量じゃないですが、公平をきすため薪の水分量も確認しておきます。使用するのはファイヤーサイドさんのデジタル含水率計です。

説明文いわく「生木の含水率は約50%です。薪ストーブの燃料として使用するには20%以下まで乾燥させる必要があります。乾燥不足の薪は燃焼効率を下げるだけでなく、煙突が詰まる原因にもなります。」だそうです。

まずは針葉樹

水分量10%と出ました。めっちゃ乾燥してますね、燃料として申し分ないです。

お次は広葉樹

水分量11%と言いたいところですが、じつはこっちはくせものでして、部位によって数値が0.8%だったり12%だったりひどい時は18%なんて数値も出ました。屋外に置いているので部分的に水分を吸ったのか、もしくは木の部分的に組成が違うのか原因は定かではありません。

ま、でも人間だって体脂肪のつき方は体の部分によって異なりますしね。だいたい10%前後ということで、針葉樹と広葉樹ともに試合前計量クリアとみなします!

燃焼比較を実験スタート

選手と舞台が整ったところで実験のルールを説明します

ルール

  • 着火剤ベスターを2つ使う
  • バケツに入れたすべての薪を使う
  • 薪を同じような組み方で配置
  • 燃焼中は火ばさみで薪を動かしたりしない
  • テントの入り口は開けっ放し。外気温は冬の北海道の1月なので-3度くらいでした

実験開始

着火します。どちらもよく乾燥しており、何の手も加えなくてもよく燃えてくれました。

針葉樹が燃える様子

広葉樹が燃える様子

わかりますか?針葉樹と比べると炎が細かくあちこちから吹き出ているんですよ。瞬間的な話ではなくて、継続的にこの傾向はみられました。これはおそらく密度の高い広葉樹の方が、噴出する炭素やイオウなどの可燃ガスの量が多いからでしょう。

事前釈明&備考

正確な検証をしたくて実験をしたのですが、あらかじめご了承いただきたい点がありますので、こちらを念頭に置いて実験結果をご覧ください。まあ細かいことを気にしない方はスルーで。

  • 温度計がデジタル式ではないので若干誤差(+-10度くらい)なところがありますのでご了承を
  • 先に針葉樹の実験をして、後に同じストーブで広葉樹の実験をしました。鋳鉄ではなく鉄板ストーブなのですぐに冷めてからのスタートを心がけましたが、それでも最初は若干のハンデ(30秒くらい)はあったかもしれません。

実験結果をグラフで公開

どっちが薪ストーブをより強く温めてくれるのか検証するため、温度計をiPhoneのタイムラプスで録画し、時間ごとの温度計の数値をチェック。グラフに書き起こしてみました。その驚きの結果がこちらです。

最高温度が70度もの開きが!

広葉樹が優れているとは聞いていたもの、ここまでとは正直驚きました。針葉樹の最高温度は160度、それにたいし広葉樹は適正温度限界近い230度まで上がり、その差は70度! 実際目の前で実験していても伝わってくる暖かさというか熱は、確かに広葉樹の方が強かったです。

「針葉樹のほうが火付きが良い」という定説は何だったのか?

もう一つ気になったのが広葉樹の爆発的なスタートダッシュです。針葉樹の方が火付きが良いという定説は一体何だったんでしょうか(笑)後発の広葉樹が若干の有利はあったものの、この差は完全な実力差です。

これはおそらく、どちらも水分量10%という優秀すぎる薪であったことが一つ。もう一つはかなり細かく割ったからということが原因かと思われますが。それにしてもこの結果は一体・・・

「広葉樹のほうが長持ちする」という定説は何だったのか?

これもよく聞く定説だったんですが、どちらも開始から24分後頃には適正温度の130度を下回っています。実際体感的にもここまでの温度だとストーブのそばにいても全然暖かさを感じません。この原因に関しては先ほどのスタートダッシュが影響してると思います。スタートが早ければ終わりも早いということですね。

結論!広葉樹のほうが絶対にいい!(笑)

出典:会津の与作

私は今回の実験を通してこう思ってしまいました。広葉樹のスタートダッシュなど定説と違う検証結果には戸惑いましたが、グラフ全体を見てもわかるように、同じ量の薪を使った場合の熱量、すなわち暖かさは広葉樹の方が断然上でした。体感的にもそう思いました。

広葉樹は重い。は欠点にならない

よく言われる広葉樹のデメリットとして「重くて女性は扱いは大変」などがありますが、これはキャンプする上で全く気にしなくていいと思います。だって逆に言えば量が少なくても暖かいってことですから。針葉樹より持っていく量を減らせばいいだけのことです。キャンプにおいて「コンパクト=正義」です。

広葉樹は煙が少ないという長所は事実

これも検証を通して実感しました。データとしてはお出しできませんが、実際ロマンチカル薪ストーブのガラスの曇り方なんかを見ていても、針葉樹はすぐに黒くなるけど、広葉樹ではあまり黒くなりません。この点からも広葉樹薪の方がオススメです。

フェザースティックは針葉樹の方が絶対作りやすい

これは針葉樹の方が本当に作りやすいです。木の柔らかさや、まっすぐな繊維がナイフで削ぎやすいのです。写真のような細かいフェザースティックは広葉樹では難しいと思います。薪割りに関しても一部のケヤキなど超硬い広葉樹だと苦労すると思いますのでご注意を。ナラ程度であれば手斧で細かくすることはできます。

 

以上、針葉樹と広葉樹の燃焼実験の紹介でした。積載量にゆとりがある方は別として、広葉樹を買っていった方がキャンプにはコンパクトで暖かく過ごせていいなじゃいでしょうか。フェザースティック作りたい人は少しだけ針葉樹を持っていけばいいのかなと。薪選びの参考にしていただけると嬉しいです。

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この記事を書いた人

北海道の日本海を眺めながらアウトドアに関する情報を発信する「道産子アウトドア編集部」

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